相続放棄は、相続権の一切を拒否する法的な手続きです。
借金の相続を回避するために利用されるケースが多いほか、利用価値のない土地や維持管理ができない遠方の土地についても、相続放棄を検討する方がいらっしゃいます。
本記事では、相続放棄が初めてでもスムーズに手続きができるように
- 相続放棄について
- 相続放棄の手続きと流れ
- 相続放棄の注意点
- 必要書類
- 相続放棄しないで土地を手放す方法
について、解説しています。
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あらかじめ相続放棄の流れを知っておくことで、相続時に「どうしたら良いか分からない」といった状況を避けられ、余裕を持って相続手続きを進められます。
目次
土地は相続放棄できる?
相続において、土地の相続放棄は珍しくないことです。
しかし、実際に手続きを実行しようとしても、相続放棄の注意すべきポイントを把握していなければ、思わぬトラブルに見舞われることもあります。
土地だけの相続放棄はできない
預貯金や有価証券などプラスとなる資産は相続し、利用価値のない「土地だけ」を相続放棄することはできません。
相続放棄を選択した場合、不動産や預貯金などのプラスの資産と、債権や借金、損害賠償責任などのマイナスの資産を同時に放棄する必要があるからです。
土地は相続放棄した後も管理義務が残る
相続人全員が相続放棄しても、相続財産管理人が決定するまでは土地の管理義務が残ります。
例えば、土地の敷地内に樹木があり、倒木や落枝により人や物に被害を出してしまった場合は、損害賠償請求を受ける可能性があります。
相続が発生し、相続放棄を選択、家庭裁判所に申し立てをしてから2か月程度で相続財産管理人が決定します。
それまでは土地を管理する必要があるので、注意が必要です。
土地を相続放棄する際の手続きと流れ
土地を相続放棄するために必要な手続きは、「申述書の作成」「家庭裁判所への提出」の2つです。
相続放棄をスムーズに進めるためにも流れを把握しておきましょう。
Step1】相続放棄申述書の作成
相続放棄申述書は、遺産の相続放棄を決定した場合に家庭裁判所にその旨を伝えるために必要な書類です。相続人、または相続人の法定代理人が申述します。
書類のひな形は全国の家庭裁判所に置いてあるので、インターネットでダウンロードする場合は裁判所ホームページの「家事審判の申立書」 のページにアクセスしましょう。
注意点として、成人と未成年者では申述書の書式が違うため、注意が必要です。
Step2】家庭裁判所へ提出
相続放棄申述書を作成したら、被相続人(故人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に持参か郵送にて提出します。
その際に収入印紙を相続放棄申述書に貼り付けます。
申述書を提出すると、2週間前後で家庭裁判所から「照会書」が届きます。
照会書の内容に回答し、返送して受理されれば手続き完了となります。
受理された場合は、返送から2週間程度で「相続放棄申述受理通知書」が届きます。
土地を相続放棄する際の注意点
土地の相続放棄には以下3つの注意点があります。
- 期限
- 他の相続人
- 全員が相続放棄し相続人がいない場合
相続放棄の手続きができない、トラブルに見舞われるなどの可能性があるので、注意点を確実に把握しておく必要があります。
注意点1】相続放棄の期限は3か月
相続放棄の期限は「相続が発生したことを知った日から3か月以内」です。
この期間を過ぎて何も手続きを取らなければ相続を承認したものとみなされ、被相続人の財産と借金など債務のすべてを引き継ぐこととなります。
病気・ケガなどのどうしようもない理由で手続きができない場合には例外的に期限をオーバーしても認められることもありますが、確実ではありません。
相続放棄するならば期間内に確実に手続きを進めましょう。
注意点2】相続人が複数いるときは放棄する旨を連絡しておく
相続人が複数いる場合には相続放棄する旨を連絡しておく必要があります。
なぜなら、相続放棄により相続権が次の順位の相続人に移るからです。
利用価値のない土地の維持管理や借金の返済などの負担を引き継ぐため、相続放棄したことの連絡を怠るとトラブルに発展する可能性もあります。
相続放棄を決定した場合はすぐ手続きに移行せず、他の相続人へ相談したうえで手続きを進めるようにしましょう。
注意点3】相続人がいない場合は相続財産管理人の選任を申し立てる
相続人全員が相続放棄した場合には、放棄した財産を管理する相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
相続財産管理人とは債権者などに対して被相続人の債務を支払うなど精算し、残った財産を国庫に帰属させる業務を執り行います。
相続財産管理人は候補者がいる場合にはそのまま選ばれることもありますが、公平な第三者として弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることが一般的です。
土地の相続放棄に必要な書類
土地の相続放棄を行う際は、以下の書類が必要です。
- 相 続放棄申述書
- 財産目録(不動産登記事項証明書や固定資産税評価証明書)
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
基本的な考え方としては、申述書、相続放棄する財産を示した書類、故人の戸籍、申述する人の戸籍で必要書類は揃います。
注意事項として、相続放棄の申し立てを行う人の立場によって、追加の書類が必要になることです。
その理由は法定相続人の相続順位が存在するためです。
常に相続人になる | 配偶者 |
---|---|
第一順位 | 子(孫) |
第二順位 | 両親、祖父母 |
第三順位 | 兄弟、姉妹(甥・姪) |
被相続人からみて、配偶者と子どもが既に亡くなっていれば相続権は両親と祖父母に移ります。
両親と祖父母も亡くなっていれば兄弟・姉妹とその甥・姪に相続権が移ります。相続放棄する際には、申述人に相続権が存在することを示さなければなりません。
仮に兄弟が相続放棄するとなった場合は、以下の書類が必要です。
- 被相続人(故人)の戸籍謄本
- 配偶者と子どもの出生から死亡までの戸籍謄本
- 父母や祖父母の死亡が記載してある戸籍謄本
上記の書類により、第三順位の兄弟が相続権を有していて、相続放棄する権利もあることが証明されます。
詳細は裁判所ホームページの「家事審判の申立書」 のページで確認できますが、弁護士や司法書士など法律家への相談をおすすめします。
土地の相続放棄にかかる費用
土地を相続放棄するためには以下の費用がかかります。
種類 | 備考 |
---|---|
収入印紙 | 800円×申述人数 |
連絡用の切手 | 申述先の裁判所によって異なる |
戸籍謄本の取得費用 | 1通450円(市区町村によって異なる) |
弁護士費用(弁護士に依頼する場合) | 最大10万円程度が相場 |
相続財産管理人を選任する場合 | 予納金など |
相続財産管理人を選任するためには手続き費用と相続財産管理人への報酬が必要です。管理人への報酬は、通常、遺産から支払われます。
しかし、遺産が少ない場合には管理人の申立人が負担しなければなりません。その場合、予納金として数十万円の費用を裁判所に支払う必要があります。
また、債権者への支払いや相続財産の管理費用も予納金から支出するケースもあります。それを踏まえ相続財産管理人を選任するためには以下の費用が必要です。
種類 | 備考 |
---|---|
収入印紙 | 800円 |
郵便切手 | 1,000円から2,000円(裁判所によって異なる) |
官報公告費用 | 4,230円 |
戸籍謄本取得費用 | 取得する書類数によって異なる |
予納金 | 20万円から100万円程度 |
特に予納金については幅が大きいので、余裕をもって事前に準備しておきましょう。
相続放棄せずに土地を手放す方法
相続放棄しなくても土地を手放せるならば、その他の財産を相続し有効活用できます。
- 寄付
- 活用
- 売却
3つの方法を検討してみましょう。
寄付する
寄付することで、相続した土地を手放すことができます。
土地を寄付する先には大きく分けて3種類あります。
- 自治体
- 法人
- 個人
無料の寄付ならば受け付けてくれると考えますが、かんたんではありません。
自治体への寄付の方法は以下3つの手順を踏む必要があります。
- 自治体に寄付の相談
- 自治体による土地の調査
- 審査に通過
自治体は基本的に土地の寄付を受けず、公共用地として取得して活用できる土地でなければ引き取りません。
土地を引き取る基準は自治体によって異なるため一概には言えませんが、まずは自治体の基準を調べ、寄付できそうならば相談することをおすすめします。
法人に寄付する場合は、一般的な会社だけでなく社団法人、NPO法人、学校法人などにも声を掛けてみましょう。
ある程度のまとまった土地ならば、保養所の建築など法人ならではの活用方法が見出せるかもしれません。
また、土地の日当たりが良ければメガソーラーのプラントを建設している法人に相談することも方法のひとつです。
さらに、声を掛けやすく可能性があるのは隣地に住む人や、隣地の所有者です。地続きで土地が増えるのならば、検討してくれる人がいるかもしれません。なお、この場合は寄付ではなく譲渡となりえます。
注意点は、土地の無償譲渡は贈与税がかかることです。また、所有権を移転すれば名義変更の登記費用がかかります。それらの費用の負担についても取り決めるために、無償譲渡だとしても契約書を締結し、トラブルに備える必要があります。
土地活用する
相続放棄を検討するような土地でも、考え方によっては活用方法が見つかります。
アパートや駐車場経営などの経営もいい方法ですが、近年ニーズが高まっているのは以下の方法です。
- サービス付き老人ホーム
- 田畑付きの田舎シェアハウス
- 太陽光発電用地
それぞれ活用するための条件を満たさなければなりませんが、相続放棄や寄付などで土地を手放す前に、具体的に検討してみましょう。
値下げして売る
土地を相続放棄しないで手放したい場合、値下げして売却する方法があります。
売却するメリットとして、土地にかかる費用負担や管理負担がなくなり、売却代金を手にできます。売却するデメリットは仲介手数料などの経費、手間や時間がかかることです。
値下げして売るのが向いているのは以下のような方です。
- 財産は相続したいけれど土地は相続したくないと考えている
- 相続する土地が遠方にあり維持管理や活用が現実的ではない
値下げしてでも売却することで、土地を所有することでかかる負担をなくせます。土地の利用目的がなければ値下げしてでも売却することをおすすめします。
「相続土地国庫帰属制度」で相続した土地を国に引き取ってもらう
相続した土地を引き取ってもらう方法として「相続土地国庫帰属制度」も選択肢のひとつです。
本制度は相続した土地所有者不明土地にならないように、相続や遺贈により土地を取得した相続人が、土地を手放して国庫に帰属させることを可能にする制度です。
本制度は令和5年4月27日からスタートします。本制度を利用するための条件は以下になります。
- 相続や遺贈により土地を取得している
- 国の審査に合格している
- 審査手数料のほかに10年分の管理費用を負担金として支払う
本制度を利用するための流れは以下の通りです。
- 承認申請
- 法務局による審査・承認
- 申請者が10年分の土地管理費相当額を納付
- 国庫に帰属
参考:法務省「相続土地国庫帰属制度について」
相続や遺贈により取得した土地に限りますが、土地を手放すための有効な方法ですので、土地の相続に悩まれた際は、検討してみるとよいでしょう。
土地の相続放棄に関するポイントをおさらい
結論、土地だけを相続放棄することはできません。
詳しくは「1.土地は相続放棄できるか?」をご確認ください。
相続放棄の注意点は以下のとおりです。
- 相続放棄の期限は相続を知った日から3か月以内
- 相続人が複数いる場合には相続放棄する旨を連絡する
- 相続人がいない場合は相続財産管理人の選任が必要
詳しくは「3.土地を相続放棄する際の注意点」をご確認ください。
相続放棄に必要な書類は以下のとおりです。
- 相続放棄申述書
- 財産目録(不動産登記事項証明書や固定資産税評価証明書)
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
- 収入印紙(相続放棄の申述人数×800円)
- 連絡用の切手代
- 戸籍謄本取得費用
- 相続財産管理人の選任費用・予納金
詳しくは「4.土地の相続放棄に必要な書類とかかる費用」をご確認ください。
この記事の編集者

IELICO編集部
家を利口に売るための情報サイト「IELICO(イエリコ)」編集部です。家を賢く売りたい方に向けて、不動産売却の流れ、税金・費用などの情報をわかりやすくお伝えします。掲載記事は不動産鑑定士・宅地建物取引士などの不動産専門家による執筆、監修を行っています。
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