リースバックとは、自宅や保有資産を一度売却したあとも、そのまま住み続けたり使い続けたりできる仕組みです。
正式には「セール・アンド・リースバック」と呼ばれ、資産を現金化しつつ使用権を維持できる点が特徴です。
不動産の活用方法として注目されており、老後の資金確保や事業資金の捻出、債務整理の一環として利用されるケースも増えています。
本記事では、リースバックの基本的な仕組みや流れ、メリット・デメリット、他の制度との違いをわかりやすく解説します。
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目次
リースバックとは?【具体的な仕組み】
リースバックは、近年では個人の住宅にも広く利用されており、自宅を売却してまとまった資金を得ながら引っ越しをせずにそのまま住み続けられる点が注目されています。
具体的には、所有者が不動産や設備などの資産をリース会社や投資家に売却し、その直後に同じ資産を借りる(リース契約を結ぶ)ことで、使用権を維持したまま資金を得る仕組みです。
企業では設備投資資金や運転資金を確保するために採用されることが多く、個人においては住宅を対象にした「自宅リースバック」が主流となっています。います。
リースバックの対象となる資産は、主に「不動産」と「事業用資産(設備・機械など)」に分類されます。
個人では自宅や賃貸用物件などの不動産を対象にするケースが一般的で、売却後もそのまま住み続ける「住宅リースバック」が代表的な形態です。
一方、企業ではオフィスビル、工場、生産設備、店舗、車両など、事業に必要な固定資産を対象とすることが多く、資産を流動化させてキャッシュフローを改善する目的で活用されています。
また、医療機関や学校法人などの非営利組織でも、施設維持費の負担を抑えるために導入される例があります。
リースバックの基本的な流れ
Step1】売却
リースバックの最初のステップは、所有者が資産を買主(リースバック業者や投資会社など)に売却する段階です。
この時点で不動産の所有権は買主に移転し、売主はその対価として現金を受け取ります。
売却価格は市場相場よりもやや低めに設定されることが多く、一般的には時価の7割程度となります。
住宅の場合、査定価格は立地や築年数、賃料想定額などをもとに算出され、早ければ数日〜1週間程度で金額が提示されます。
Step2】資金の受け取り・引き渡しの成立
資産の売却が成立すると、所有者はリースバック業者から売却代金を受け取り、即座に資金化することができます。
リースバックでは「ローン完済済みの物件」であることが条件となることが多く、債務が残る場合は金融機関と業者が協議し、残債処理の可否を判断します。
Step3】賃貸借(リース契約)の締結
売却手続きが完了した後、元の所有者は買主と賃貸借契約(リース契約)を締結し、元の所有者は「借主」として同じ物件を引き続き利用できるようになります。
契約形態は主に「普通借家契約」または「定期借家契約」のいずれかで、期間は2〜5年程度に設定されるのが一般的です。
家賃は、売却価格や地域の相場、将来的な買戻し条件などをもとに算出され、毎月支払う形で設定されます。
また、契約書には「買戻しオプション」が盛り込まれることもあり、一定期間経過後にあらためて所有権を取り戻すことも可能です。
Step4】家賃支払い
リース契約の開始後、元の所有者(借主)は毎月の家賃を支払いながら、引き続き同じ不動産を利用します。
家賃は契約時に定められた金額をもとに、原則として銀行口座からの自動引き落としなどで支払われます。一般的に、家賃は周辺の賃貸相場や売却価格を基準に算出され、市場価格よりやや高めに設定されることもあります。
物件の管理や修繕に関しては、契約内容によって分担が異なります。軽微な修繕(電球交換や室内清掃など)は借主負担となる一方で、建物の大規模修繕や外壁補修などは所有者であるリースバック業者側が対応するケースが多いです。
固定資産税や火災保険料も、基本的には所有者(買主)が負担しますが、契約によっては借主側の支払いが一部必要な場合もあります。
Step5】契約終了・買戻し
リースバック契約の終了時には、契約内容に応じて「退去」または「買戻し」という2つの選択肢が発生します。
定期借家契約の場合、契約期間満了後に自動更新は行われず、借主は原則として退去することになります。ただし、契約時に「買戻しオプション」が設定されている場合は、あらかじめ定められた条件で再び所有権を取得することが可能です。
買戻し価格は、初回の売却時に取り決められていることが多く、売却価格に一定の利息や手数料を加えた金額として設定されます。
一方で、買戻しを希望しない場合や資金的に困難な場合は、契約満了時点で退去し、物件は引き続きリースバック業者や投資家の所有物となります。
また、契約期間中に解約や家賃滞納が発生した場合には、契約解除条項に基づいて明け渡しが求められることもあるため、契約内容の確認と資金計画の管理が重要です。
リースバックのメリット
メリット1】資金調達を迅速に行える
リースバックの大きな特徴のひとつが、売却によって短期間でまとまった資金を得られる点です。
通常の不動産売却では、買主の探索や仲介手続きに数週間から数か月を要しますが、リースバックでは業者が直接買い取るケースが多く、最短で数日〜2週間ほどで現金化が可能です。
また、金融機関からの新規借入とは異なり、審査や担保設定の手続きが不要なため、信用情報に影響を与えずに資金を確保できるのもメリットです。
メリット2】住まいに引き続き住み続けられる
自宅リースバックの場合、所有権は手放しても住み慣れた家から引っ越す必要がなく、生活環境を変えずに資金化が可能です。
特に高齢者や家族の生活拠点を維持したい世帯にとっては、精神的な負担が少なく安心感があります。
また、企業においても同様に、事務所や工場などをリースバックすることで操業を止めずに資金を確保でき、経営の安定性を保てます。
メリット3】物件の維持費・税金などの支払いを回避できる
リースバックを利用すると所有権が買主に移転するため、物件の維持にかかるコストやリスクを大幅に軽減できます。
通常、所有者である場合は固定資産税や都市計画税、建物の修繕費など、年間を通じて一定の維持費が発生します。
しかし、リースバック後は所有者がリース会社や投資家に変わるため、これらの負担は原則として買主側が引き受けます。
借主となった元所有者は、家賃を支払うだけで物件を利用できるため、予期せぬ修繕や税金の支出に悩まされるリスクを減らせます。
また、建物の老朽化や資産価値の下落といったリスクも買主が負担する形となるため、長期的に見ても安定した生活・事業運営を維持しやすくなります。
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リースバックのデメリット・リスクと注意点
デメリット1】売却価格が低くなる可能性
リースバックでは、物件を通常の市場価格よりも低い金額で売却するケースが多く見られます。その理由は、買主(リースバック業者や投資家)が「売却後も貸し出すリスク」を負うためです。
物件を購入した後も前所有者が居住・使用することになるため、空室リスクや家賃滞納リスク、将来的な買戻し希望などが発生します。
こうしたリスクを見込んで、一般的な相場より10〜30%程度低い価格で買取額が提示されることが多いのが実情です。
デメリット2】賃料が相場より高いことも
リースバックでは、資産を売却して現金を得た後も、その資産を利用し続けるために家賃の支払いが発生します。
この家賃は、売却価格や地域の賃貸相場、物件の状態などをもとに算出され、一般の賃貸物件よりも高めに設定されることが少なくありません。
特に自宅リースバックでは、買主が取得後の運用リスクや管理コストを考慮するため、家賃は市場相場よりも1〜2割ほど高くなるケースもあります。
そのため、売却後に得た資金を生活費や老後資金として使う場合は、家賃負担とのバランスを慎重に検討する必要があります。
家賃を長期間支払い続けることが難しいと判断される場合は、契約期間の短縮や家賃設定の見直しを交渉段階で確認しておくことが重要です。
デメリット3】賃貸契約の条件・更新リスク
リースバックでは、契約期間や更新条件によって将来的な居住・利用の可否が左右される点に注意が必要です。
多くの契約は「定期借家契約」となっており、契約期間(2〜5年など)が満了すると自動更新が行われず、退去を求められる可能性があります。
一方、「普通借家契約」であれば更新が可能ですが、その分家賃が高く設定される傾向があります。
また、契約更新時に家賃改定条項がある場合、物価変動や市場相場を理由に家賃が引き上げられることもあります。
デメリット4】買戻し条件によっては自由な買い戻しの制限があることも
リースバックでは、「買戻しオプション」を設定することで、一定期間経過後に再び所有権を取り戻すことが可能です。
ただし、買戻し価格は初回売却時に取り決められているケースが多く、通常は「売却価格+利息や手数料」を上乗せした金額になります。
そのため、再取得のためには売却時よりも高い資金が必要となることが多いです。
また、買戻しの行使期限が設定されている場合、期限を過ぎると権利が失われるため、資金計画を事前に立てておく必要があります。
加えて、買い戻し特約という強い特約を行使すれば半ば強制的に買い戻しが可能ですが、これは必ず買い戻しをしなければいけないということで利用者側にも負担が大きいです。
デメリット5】住宅ローン残債を返済できないなら利用でいないことも
リースバックを利用する際に注意が必要なのが、住宅ローンなどの担保設定が残っているケースです。
不動産に抵当権が設定されている場合、売却時にその抵当権を抹消しなければ所有権を移転できません。したがって、売却代金でローン残債を完済し、同時に抵当権の抹消手続きを行う必要があります。
もし売却金額が残債を下回る場合は、金融機関との協議が必要となり、リースバック契約が成立しない場合もあります。
デメリット6】改築・リフォームが自由にできない
リースバック契約では所有権が買主に移転しているため、借主(元所有者)が自由にリフォームや改築を行うことはできません。
壁の撤去や間取り変更といった構造的な工事はもちろん、外壁塗装や屋根の修繕なども原則として所有者の承諾が必要です。
無断でリフォームを行った場合、契約違反とみなされ、原状回復や損害賠償を求められるリスクがあります。
ただし、クロスの張り替えや家具の設置など、軽微な内装変更であれば許可を得ずに行える場合もあります。
リースバックを利用する具体的な事例・活用用途
住宅リースバックの事例
最も一般的な活用例が、自宅を対象とした住宅リースバックです。
たとえば、老後の生活資金に不安を感じる高齢者が、自宅をリースバック業者に売却し、その資金を老後資金として確保するケースがあります。
売却後も同じ家に住み続けられるため、住環境を変えることなく安心して老後生活を送ることができます。
また、子どもへの相続トラブルを避ける目的でリースバックを利用し、資産を現金化した上で遺産分配を明確にしておく事例もあります。
このほか、離婚や転職などのライフイベントに伴う一時的な資金需要にも対応できるため、柔軟な資金調達方法として活用が広がっています。
事業用資産(設備・機械)での活用
リースバックは企業にとっても有効な資金調達手段です。
たとえば、製造業が保有する工場や大型設備をリースバックで売却し、その後も自社で利用を続けるケースがあります。
これにより、資産を手放すことなく運転資金や新規投資資金を確保でき、キャッシュフローの改善や財務体質の強化につながります。
特に、中小企業や個人事業主の場合、銀行融資が難しい状況でもリースバックによって短期間で資金を調達できる点が魅力です。
また、事業用資産の老朽化に伴う維持管理コストを削減し、資産を「所有」から「利用」に切り替える経営戦略としても活用されています。
オフィスビルや店舗などの不動産も対象となるため、事業継続と財務安定を両立させたい企業に適した手法といえます。
老後資金や相続対策・債務整理
リースバックは老後資金の確保や相続対策、さらには債務整理の手段としても活用されています。
高齢者世帯では年金収入だけでは生活資金が不足する場合に、自宅をリースバックで売却し、まとまった資金を得ることで老後の生活を安定させることができます。
また、相続対策としては資産を現金化しておくことで相続時の遺産分割をスムーズに行えるほか、相続税の納税資金を確保する手段としても有効です。
債務整理の場面では、住宅ローンや事業借入の返済が困難になった際にリースバックを利用することで、競売を避けつつ居住を維持できるケースもあります。
リースバックを利用する際のポイントをおさらい
リースバックは自宅や保有資産を売却して現金化しながら、同じ場所で生活や事業を続けられる柔軟な仕組みです。
資金確保と生活の安定を両立できる一方で、売却価格が低くなりやすい点や家賃負担の継続といった注意点も存在します。
契約内容を十分に理解し、家賃設定・契約期間・買戻し条件などを慎重に確認したうえで導入することが大切です。
また、リースバックは老後の資金対策、事業の資金繰り改善、相続準備など、多様な場面で有効に活用できます。
専門家や信頼できる業者と相談しながら、自身の目的に合った形で活用すれば、リスクを抑えつつ資産を有効に運用できる手段となるでしょう。
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この記事の編集者
IELICO編集部
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