土地を相続した方のなかには、相続税をいくら支払う必要があるのか疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
相続税は、評価額をもとに税金を計算するため、土地評価額を把握する必要があります。
そこでこの記事では土地評価額の概要や計算方法をわかりやすく解説します。
この記事を読めば相続後の税金のことがわかり、今後必要な費用を把握できます。
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目次
1.相続時に必要な土地評価額とは?
土地評価額とは、相続税や固定資産税など各種税金を計算する際の基準となる価格です。
土地の売主と買主の合意によって決まる実勢価格(時価)とは異なり、国や地方自治体などの公的機関が公表します。
土地を相続した際は、土地に関する税金を算出するためにも土地評価額を把握しましょう。
不動産は時価ではなく評価額をもとに税金を計算するため、評価額を把握しなければ税金を求められません。
なお、相続税を算出する際は不動産だけでなく、すべての相続財産を合計して計算する必要があります。
また、不動産は一物五価といい、一つの不動産に対して複数の価格があります。
それぞれの違いは以下の表を参考にしてください。
公示地価 | 基準地価 | 実勢価格 | 相続税評価額(相続税路線価) | 固定資産税評価額 | |
---|---|---|---|---|---|
決定期間 | 国土交通省 | 都道府県 | 売主・買主 | 国税庁 | 自治体 |
役割 | 評価額や時価の基準 | 公示地価を補う役割 | 不動産取引が成立する際の価格 | 相続税や贈与税の基準 | 固定資産税や登録免許税、不動産取得税の基準 |
評価の目安 | ー | ー | 売主と買主の合意 | 公示価格の80% | 公示価格の70% |
注意が必要なのは税金によって指標とする評価額が異なることです。
例えば、相続税は相続税評価額、固定資産税は固定資産税評価額をもとに計算します。
誤った評価額を参考にすると計算結果が変わってしまうため注意しましょう。
相続税評価額は実勢価格よりも低くなるのが一般的です。
そのため、現金ではなく不動産で相続すると相続税が圧縮されます。
2.土地を相続したときに評価額を計算する方法
土地の相続税評価額の計算方法は「路線価方式」と「倍率方式」に分けられます。
それぞれの計算方法は以下の通りです。
■土地の評価額計算方法
路線価方式 | 路線価×土地面積 |
---|---|
倍率方式 | 固定資産税評価額×倍率 |
路線価とは道路に定められている価格であり、相続税評価額は路線価方式で計算するのが一般的です。
しかし、路線価は市街地の道路にしか定められていません。
路線価が定められていないエリアは固定資産税評価額を用いて倍率方式で算出します。
路線価・倍率ともに国税庁が運営する「路線価・評価倍率表」で確認できるため、相続した土地の路線価や倍率を調べてみましょう。
2-1. 路線価方式で土地評価額を求める方法
路線価方式で土地評価額を求める際は、相続した土地の前面道路の路線価を「路線価・評価倍率表」で確認しましょう。
例えば、土地の前面道路に「210D」と記載されている場合、路線価は21万円/平米です。
数字のあとに記載されているアルファベットは借地権割合を指しますが、借地権割合を用いるのは土地が借地の場合のみであり、所有権の場合は借地権割合を気にせずに計算します。
今回は所有権の土地として計算するため、借地権割合は抜きで考えます。
前面道路の路線価を調べた後は土地面積を調べましょう。
土地面積は登記簿謄本の「地積」の箇所に記載されています。
仮に地積が100平米の場合、土地の相続税評価額は以下の通りです。
なお、土地は必ずしも正方形であるとは限りません。
不整形地の場合は、間口の広さや奥行きの長さなどをもとに画地補正率を掛けて評価額を算出します。
しかし、画地補正率は計算方法が複雑になるため、税理士などの専門家に計算してもらうことをおすすめします。
2-2. 倍率方式で土地評価額を求める方法
倍率方式で土地評価額を求める際は、相続した土地の評価倍率を「路線価・評価倍率表」で確認しましょう。
次に以下のいずれかの方法で土地の固定資産税評価額を調べます。
- 納税通知書に同封されている課税明細書を確認する
- 役場(東京23区は都税事務所)で固定資産評価証書を取得する
- 役場(東京23区は都税事務所)固定資産課税台帳を閲覧する
仮に土地の固定資産税評価額が1,000万円、評価倍率が1.2倍の場合、土地の相続税評価額は以下の通りです。
3.相続税を減額できる条件
土地の相続税評価額は、対象地の利用方法や契約形態、形状などによって減額されます。
具体的な条件と受けられる減額は以下の通りです。
【相続税を減額できる条件】
- アパートや貸家の敷地に使われている土地:約20%の減額
- 地主から借りている土地:30〜90%の減額
- 500平米以上の広い土地:エリアによる
- 立地・条件が不利な土地:土地の形状による
- 小規模住宅地等の特例が適用できる土地:50〜80%減額
相続税の計算は複雑であり、税理士であっても回答が異なるほどです。
個人で精度の高い計算をするのは困難であるため、上記の内容はあくまでも知識として頭に入れておき、実際には相続案件の経験が豊富な税理士に依頼するのがおすすめです。
3-1. アパートや貸家の敷地に使われている土地
アパートや貸家の敷地に使われている土地は「貸家建付地」といい、通常の相続税評価額と計算式が異なります。
自用地としての価額は通常の相続税評価額を指します。
借地権割合とは各エリアに設定されている借地権価額の割合であり「路線価・評価倍率表」で確認できます。
借地権割合は「210D」のようにアルファベットで記載されています。
各アルファベットの借地権割合は以下の表を参考にしてください。
アルファベット | 借地権割合 |
---|---|
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
借家権割合は全国一律で30%です。
賃貸割合とは対象不動産を賃貸に出している床面積の割合であり、空室率・稼働率とは異なる点に注意しましょう。
計算式は以下の通りです。
例えば、全10室のアパートのうち稼働している8室の合計面積が240平米で、空室2部屋の合計面積が80平米の場合、賃貸割合は「240平米÷320平米=75%」となります。
以下の条件で貸家建付地の価額をシミュレーションをしてみましょう。
- 自用地としての価額:2,000万円
- 借地権割合:60%
- 借家権割合:30%
- 賃貸割合:75%
上記の通り、アパートや貸家の敷地に使われている土地は概ね20%程度の減額を受けられるケースが多いです。
3-2. 地主から借りている土地
地主から借りている土地は「所有権の土地」ではなく「借地権の土地」であるため、借地権割合に応じた減額が受けられます。
計算式は以下の通りです。
前述の通り、借地権割合はA〜Gの7つに分かれており30〜90%に設定されています。
例えば、土地の相続税評価額が3,000万円であり、借地権割合が60%であれば「3,000万円×60%=1,800万円」となります。
ただし、借地のなかでも定期借地権や一時使用目的の借地権の評価方法は異なるため、詳しくは国税庁のサイトをご確認ください。
3-3. 500平米以上の広い土地
500平米以上の地積規模の大きな宅地は評価額が減額されます。
計算式は以下の通りです。
規模格差補正率の計算式は以下の通りです。
BとCに関しては以下の表を参考にしてください。
【三大都市圏に所在する宅地】
地積 | 普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 | |
---|---|---|
B | C | |
500平米以上 1,000平米未満 |
0.95 | 25 |
1,000平米以上 3,000平米未満 |
0.90 | 75 |
3,000平米以上 5,000平米未満 |
0.85 | 225 |
5,000平米以上 | 0.80 | 475 |
【三大都市圏以外の地域に所在する宅地】
地積 | 普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 | |
---|---|---|
B | C | |
1,000平米以上 3,000平米未満 |
0.90 | 100 |
3,000平米以上 5,000平米未満 |
0.85 | 250 |
5,000平米以上 | 0.80 | 500 |
※参考:国税庁『地積規模の大きな宅地の評価』
三大都市圏とそれ以外の地域で面積の基準や適用される数値が異なる点に注意しましょう。
3-4. 立地・条件が不利な土地
立地や条件が不利な土地は評価額の減額を受けられます。
具体的には以下のような土地です。
- 不整形地
- 狭小地
- がけ地 など
土地の相続税評価額は整形地であれば「路線価×土地面積」で求められます。
一方、不整形地など条件が不利な土地は、以下の計算式で求めます。
例えば、普通住宅地区の場合、奥行きの長さによって0.8〜1.0の補正率を掛けて算出します。
各種補正率は国税庁のサイトで確認できます。
しかし計算方法や判断基準が複雑であるため、専門家への依頼するのがおすすめです。
3-5. 小規模住宅地等の特例が適用できる土地
小規模住宅地に該当し一定の要件を満たす場合、最大80%の減額を受けられます。
小規模宅地等の特例を受けられる土地は大きく分けて以下の3種類です。
- 被相続人が住んでいた土地
- 被相続人が事業をしていた土地
- 被相続人が貸していた土地
それぞれの減額される割合は以下の表を参考にしてください。
相続開始の直前における利用区分 | 具体例 | 限度面積 | 減額される割合 |
---|---|---|---|
被相続人が住んでいた土地 | 自宅マンションの土地 (特定居住用宅地等) |
330平米 | 80% |
被相続人が事業をしていた土地 | 不動貸付業以外の事業で使用していた土地 (特定事業用宅地等) |
400平米 | 80% |
被相続人が貸していた土地 | 賃貸マンションの土地 (特定同族会社事業用宅地等・貸付事業用宅地等) |
200〜400平米 | 50〜80% |
※参考:国税庁『相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)』
適用を受けるにはさまざまな要件があるため、詳細は国税庁のサイトをご確認ください。
4.土地を相続したら固定資産税がかかる
土地を相続した際は相続税が課されますが、相続税には基礎控除があるため多くのケースで納税義務は発生しません。
そのため、急いで売却する必要性がなく、相続した土地を保有しておこうと考えている方も多いでしょう。
しかし、土地を保有する場合は毎年固定資産税がかかる点に注意が必要です。
ランニングコストとなるため事前にいくらの固定資産税がかかるのかを把握しておきましょう。
本章では固定資産税の計算方法や保有する際の注意点について解説するので、保有を検討している方はぜひ参考にしてください。
4-1.相続した土地にかかる固定資産税の金額の計算方法
相続した土地にかかる固定資産税の計算式は以下の通りです。
■固定資産税の計算方法
前述の通り固定資産税評価額は、固定資産評価証明書や納税通知書に同封されている課税明細書で確認できます。
税率に関しては1.4%が基本ですが、1.5〜1.6%に設定している自治体もあるため、自治体のホームページなどを確認してみましょう。
4-2.相続した土地を保有するときにかかる固定資産税の注意点
相続した土地に建物が建っている場合は注意が必要です。
建物が建っている土地には住宅用地の特例措置が適用されており、税率が軽減されています。
建物を解体すると最大で6倍もの固定資産税を納めなければなりません。
このような理由から建物が古くなっても解体せずに放置されている空き家が日本全国に存在しています。
管理されていない空き家が増えると、建物の劣化による倒壊や治安の悪化など、地域に悪影響を与える可能性があります。
今後使う予定のない空き家を所有するのは、管理の手間とコストがかかることを考慮しましょう。
なお、倒壊の危険があり自治体から改善の勧告を受けたにもかかわらず従わずにいると、特定空き家に指定され住宅用地の特例措置から除外される可能性があります。
5.相続で評価額の計算に注意が必要な土地
通常の住宅用地と異なる計算で評価額を算出するケースもあります。
以下の土地を相続する際は、評価額の計算に注意しましょう。
- 農地
- 駐車場
- 私道が含まれている土地
それぞれ詳しく解説します。
5-1. 農地の相続
農地の相続税評価額は倍率方式で求めます。
しかし使用する倍率は宅地ではなく「田」や「畑」です。
なお、農地の区分によって計算方法が異なる点に注意しましょう。
具体的には以下の表を参考にしてください。
区分 | 計算式 |
---|---|
純農地 | 固定資産税評価額×倍率 |
中間農地 | 固定資産税評価額×倍率 |
市街地周辺農地 | 市街地農地であるとした場合の価額×80% |
市街地農地 | (宅地であるとした場合の1平米あたりの価額-1平米あたりの宅地造成費)×地積 |
※参考:国税庁『農地の評価』
5-2. 駐車場の相続
駐車場の相続では使用方法によって評価額の計算方法が異なります。
駐車場の使用方法 | 評価方法 |
---|---|
自家用車を停めるための駐車場 | 自用地としての評価 |
自営の貸駐車場 | 自用地としての評価 |
コインパーキング (企業による土地一括借上げ) |
賃借権の価額 |
参考:国税庁『貸駐車場として利用している土地の評価』
賃借権の価額は残存期間によって異なるため、詳しくは国税庁のサイトをご確認ください。
また、土地のうえに建物や構築物がある駐車場と青空駐車場で評価方法が異なります。
まずは駐車場がどのような状態であるかを確認しましょう。
5-3. 私道が含まれている
私道の相続では私道の使用方法によって評価方法が異なります。
私道の使用方法 | 評価方法 |
---|---|
不特定多数の方が使用 | 評価しない |
特定の方のみが使用 | 30%評価 |
所有者のみが使用 | 隣接する宅地とともに1画地の宅地として評価 |
参考:国税庁『私道の評価』
私道を相続した際は、私道がどのように使われているかを確認しましょう。
6. 相続した土地を売却するなら一括査定が便利!
土地を相続したものの今後の使い道がない場合は、売却を検討するのがおすすめです。
土地を所有していると固定資産税がかかることに加え、建物がある場合は管理の手間もかかるためです。
なお、相続した大切な土地を少しでも良い条件で売却するには、一括査定を活用しましょう。
一括査定では一度に複数の不動産会社へ査定を依頼できるため、適正な価格を把握できます。
不動産会社ごとの特徴や強みも分かるため、より好条件で売却してくれる不動産会社と出会える可能性も高まります。
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「IELICO(イエリコ)」では、厳選された2,100社から最大6社に一括査定の依頼が可能です。
スマートフォンからでも簡単に査定を依頼できるため、相続した土地の売却を検討している方は、ぜひご活用ください。
この記事のポイントまとめ
土地評価額とは、相続税や固定資産税など各種税金を計算する際の基準となる価格です。
相続税は相続税評価額、固定資産税は固定資産税評価額をもとに計算します。
詳しくは「1.土地の価値を決める5つの条件」をご覧ください。
土地の相続税評価額の計算方法は「路線価方式」と「倍率方式」に分けられます。
それぞれの計算式は以下の通りです。
- 路線価方式:路線価×土地面積
- 倍率方式:固定資産税評価額×倍率
詳しくは「2.土地を相続したときに評価額を計算する方法」をご覧ください。
以下に該当する土地は、一定の条件を満たせば相続税評価額が減額されます。
- アパートや貸家の敷地に使われている土地:約20%の減額
- 地主から借りている土地:30〜90%の減額
- 500平米以上の広い土地:エリアによる
- 立地・条件が不利な土地:土地の形状による
- 小規模住宅地等の特例が適用できる土地:50〜80%減額
詳しくは「3.相続税を減額できる条件」をご覧ください。
固定資産税は不動産を所有していると毎年納めなければなりません。
相続した土地を所有し続ける限り毎年納めることになるため、事前に固定資産税額を把握しておきましょう。
詳しくは「4.土地を相続したら固定資産税がかかる」をご覧ください。
相続した土地の売却では一括査定がおすすめです。
一括査定では一度に複数の不動産会社へ査定を依頼できるため、適正な価格を把握できます。
不動産会社ごとの特徴や強みも分かるため、より好条件で売却してくれる不動産会社と出会える可能性も高まるでしょう。
複数社に査定を依頼するなら、NTTデータグループが運営する一括査定サイト「IELICO(イエリコ)」がおすすめです。
詳しくは「6.相続した土地を売却するなら一括査定が便利!」をご覧ください。
この記事の編集者
IELICO編集部
家を利口に売るための情報サイト「IELICO(イエリコ)」編集部です。家を賢く売りたい方に向けて、不動産売却の流れ、税金・費用などの情報をわかりやすくお伝えします。掲載記事は不動産鑑定士・宅地建物取引士などの不動産専門家による執筆、監修を行っています。
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