老後に住み替えを行うときは、暮らしやお金のことで不安が解消するように計画を立てる必要があります。基本的な部分をしっかりと押さえておくことで、失敗を回避できるように計画を立てておきましょう。

住み替えを行う理由や具体的な手段を把握して、自分に合った方法を選んでいくことが大切です。この記事では、老後に住み替えを行うときのポイントを詳しく解説します。

1.老後の住み替えを考え始めるタイミング

老後に住み替えを行うならば、早めに計画を立てておくほうが実行しやすい面があります。例えば、定年後すぐのタイミングであれば、新たに住宅ローンを組んで家を購入することも可能です。

計画的に老後の生活を構築するために、次の3つのタイミングを押さえておきましょう。

それぞれのタイミングでのポイントを見ていきましょう。

1-1.子どもが家を離れたとき

家を購入した当初と比べて、老後の生活を考える時期には家族構成にも変化が生じているものです。特に子どもが進学や就職、結婚などで家を離れるタイミングでは、急に家が広くなったように感じる面もあるでしょう。

夫婦2人で老後の暮らしを考えるのであれば、ファミリー向けの間取りでは部屋数が余ってしまうものです。部屋数が多ければ、掃除を行うだけでも大変であり、また体力がだんだんと低下していく老齢期においては、生活動線の見直しも必要になるでしょう。

住み替えを考える時期にはそれほど体力の衰えを感じなかったとしても、将来の暮らしのことを考えれば、段差がなくコンパクトな住居に住みたいと感じるのも自然なことです。
また、買い物や通院などに便利な土地であれば、生活にかかる負担を軽減しながら、快適な老後を過ごせるでしょう。

1-2.定年退職が近づいてきたとき

2025年（令和7年）4月から、定年制を設けているすべての企業で「65歳定年制」が義務化となります。人生100年時代とも言われる中で、今までの価値観とは異なった形で老後の暮らしを考えていく必要があります。

仕事と生活のバランスをうまく取るためには、住まいについても改めて考えることが重要です。長時間かけて職場に向かうのはだんだん辛くなってくる面もあるため、できるだけ職場に近い場所に住まいを購入するのも1つの方法でしょう。

また、リモートワークが可能な職場であれば、自宅にワークスペースを設けるなどの工夫も必要になってきます。定年が近づいてきたタイミングで、今後の働き方や暮らし方についてじっくりと時間をかけて考えたうえで、自分に合った生活が行える住まいを見つけることが大切です。

1-3.老朽化で建て替えやリフォームが必要になったとき

住宅の購入時期が早ければ早いほど、老後を迎える段階では家の老朽化が目立ってきます。一戸建てか、マンションであるかにかかわらず、築年数が多くなればその分だけ修繕費用もかさんでくるものです。

大規模なリフォームや修繕工事を行って、そのまま住み続けることも可能ですが、老後のための資金が減ってしまえば不安を感じる部分もあるでしょう。また、今後年金だけの収入で生活を維持できるのか心配になる面もあるはずです。

新たに費用をかけるよりも、今の暮らしを見直すことで老後も安心して暮らせる家を確保することが大切です。家の老朽化で建て替えや修繕を検討するときには、住み替えを行う良いタイミングだと言えます。

2.老後の住み替えの方法

老後に差し掛かる時期に住み替えを行う場合、選択肢としてさまざまな方法があります。どの方法が適しているかはライフスタイルにもよるため、各方法のポイントを押さえたうえで自分に合った方法を選ぶことが重要です。

老後に住み替えを行うときの具体的な方法として、次の5つが挙げられます。

それぞれの方法について、ポイントを見ていきましょう。

2-1.マンションを購入

これまで一戸建てに住んでいた方の場合、老後の暮らしの拠点としてマンションを選んでみるのも1つの方法です。駅前や商業施設が多くあるエリアのマンションであれば、買い物や病院への通院、電車での移動などがラクになります。

利便性の優れた立地にあるマンションは人気が高いため、購入費用が多めにかかりますが、子どもが自立して夫婦2人の暮らしであれば、それほど広い住まいである必要はないでしょう。部屋数を最小限に絞り込んだほうが、掃除やメンテナンスなどの負担も減り、コンパクトな暮らしを実現できるでしょう。部屋数や広さを必要最小限にすることで購入費用を抑えることもできます。

高齢化の進展に伴って、シニア向けのマンションも増えていますので、立地から考えて住まいを選んでみるのも良いでしょう。また、資産価値を保ちやすい物件であれば、将来的に売却しやすいというメリットもあります。

家族に負担をかけないために、生活の機能面を高めて、自分で管理できる範囲で住まいを選んでいくことが大切です。

2-2.一戸建てを購入

定年間際のタイミングであれば、新たに住宅ローンを組んで一戸建てを購入することも可能です。一戸建ての良さは、自分らしいライフスタイルを実現しやすいという点にあるでしょう。

マンションとは違って、広い庭を確保することもできますので、ガーデニングやDIYなどを楽しむことができます。自宅を自分好みにできるという点は、マンションとは違った魅力であり、暮らしを楽しむ方法と言えるでしょう。

マンションの場合は管理規則で決められたルールの中でしか、リフォームを行うことができません。そのため、好きなインテリアを楽しみたかったり、自分の趣味を存分に満喫したかったりする場合は、一戸建てのほうが自由に暮らしやすいでしょう。

また、郊外に一戸建てを購入すれば、隣家と適度な距離感を保てますのでストレスをあまり感じずに暮らすことができます。静かな環境の暮らしを手に入れることによって、快適な老後の暮らしを実現できるはずです。

マンションから戸建てへの住み替えをお考えの方は、以下の記事も参考にしてください。

2-3.賃貸物件への引っ越し

老後の生活を賃貸物件で送るのも、気軽に暮らしたい方にはおすすめです。一戸建ては自分の好きなような暮らしができる一方で、自宅の管理や修繕などをすべて自分で行う必要があります。

細々とした用事が多くなってしまっては、せっかくの老後の暮らしを窮屈なものに感じてしまうでしょう。一方、賃貸物件の場合は住まいの修繕や管理などは、大家さんや管理会社が行ってくれるので面倒なことがありません。

現状の家賃よりも安めの金額で住める物件に移り住めば、経済的な面での不安も解消できるはずです。年齢を重ねていくと保証人になってくれる方を探すのが大変だと感じてしまいがちですが、高齢者向けに保証人のサービスを行っているところも多くありますので、それほど問題とはならないでしょう。

賃貸物件であれば、住みたい場所にいつでも引っ越すことができますので、旅行先で気に入った場所に移り住んでみるのも良いでしょう。自宅の管理に手間をかけず、伸び伸びとした暮らしを実現したい方にとって、賃貸物件での生活はおすすめです。

2-4.シニア向け住宅（高齢者住宅）

老後の暮らしで不安なことの1つとして挙げられるのは、急な病気やケガに見舞われてしまったときに、うまく対応できるだろうかといった点です。老後を単身世帯として過ごす方も多くなっており、健康に関する不安を抱えてしまう場合もあるでしょう。

日々の暮らしに不安を感じる方におすすめなのが、シニア向けの高齢者住宅です。医療機関や介護施設が併設されているところも多く、体調不良が起こったときでも安心できます。

健康であることは何よりも暮らしの基本となりますので、いつでも手厚いサービスを受けられる環境に身をおくことで心を落ち着けられるでしょう。また、同世代の方たちとのコミュニティも形成しやすく、にぎわいのある暮らしを得たい方にもおすすめです。

同年代であれば、同じような悩みを持ち、共有できることもありますので、話し相手がいるというだけでも大きな安心につながります。一戸建てやマンションの場合はあらゆる世代と交流することになりますが、それほど付き合いの幅を広げたくないという場合には、同じ世代が多く暮らすシニア向けの高齢者住宅を選ぶと良いでしょう。

2-5.建て替えもしくはリフォーム

今住んでいる住居を若いうちに購入したのであれば、年月の経過とともに自宅の老朽化が進んできているでしょう。新たな場所に移り住むのも良いですが、住み慣れた場所でそのまま老後を送っていくのも良い選択です。

顔なじみの方たちが近所にいたり、土地勘のある場所であれば生活そのものに不安を感じたりすることも少ないでしょう。一方で、住宅そのものは老朽化していますので、そのままの状態では暮らしづらいという面も出てきます。

家の内装をバリアフリー化したり、新築として建て替えたりすることで、新たな気持ちで老後の生活をスタートできるでしょう。定年後すぐであれば、住宅ローンを組むことは可能ですので、早めの検討をおすすめします。

3.老後の住み替え先を選ぶポイント

老後の住み替え先を選ぶ際には、これまでとは違った視点で物件を選んでいく必要があります。
あらかじめ住み替え先を選ぶポイントを把握しておけば、理想的な老後のライフスタイルの構築に役立つでしょう。老後の住み替え先を選ぶ4つのポイントとして、以下の点が挙げられます。

各ポイントについて、どのようなことを意識すべきかを解説します。

3-1.部屋の過ごしやすさ

老後の暮らしを考えるうえでは、部屋の中で快適に過ごせるかを重視する必要があります。意識すべきポイントとしては、次の点が挙げられます。

定年退職後は家で暮らす時間が増えるため、家事を行うときの生活動線や住宅のバリアフリー化を意識して、住まいを選ぶ必要があります。コンパクトな間取りのほうが、部屋全体に目が行き届きやすくなるので、掃除もラクになるでしょう。

部屋の快適度が低ければストレスを感じるだけでなく、転倒などケガの危険性も高まります。実際の暮らしのイメージを持ちながら、住み替え先を選ぶことが大切です。

3-2.周辺の環境

室内の環境について考えるときには、周辺環境についても考慮をしておく必要があります。住み慣れた土地であれば問題がなくても、新たな場所に移り住む場合はわずかな環境の変化にもストレスを感じやすいものです。

一般的には、都市部から離れた郊外の土地であれば、騒音が少なく静かに暮らせる傾向があります。にぎやかな街で老後を過ごしたいか、落ち着いた環境で暮らしたいかで住み替えを行うエリアも決まってくるでしょう。

ゆったりとした生活を求めるならば、老後のコミュニティを比較的形成しやすい場所に住み替えるほうが心配事は少なくなります。適度に人との交流がある環境に身をおくことで、伸び伸びとした生活を送りやすくなるでしょう。

3-3.予算内で住み替えられるか

住みたいエリアが決まったら、住み替えを行う費用をシミュレーションしておく必要があります。すべての希望を叶えようとすれば、予算が膨らみがちですので、どの条件を優先させるべきかを精査してみましょう。

また、住み替えにかかる費用だけでなく、入居後の生活費やランニングコストも考慮したうえで無理のないライフプランを立てることが重要です。年金だけの生活でも経済的な面で問題がなければ、不安のない老後を送っていけるでしょう。

住み替えの計画を立てるために、今住んでいる自宅がいくらで売却できるのかを調べることが大切です。不動産の一括査定サービスを利用すれば、物件情報などを入力するだけで、一度に複数の会社に対して査定依頼を行えます。

査定額はあくまでも売却価格の目安ではありますが、老後の資金計画を立てるうえで大事な判断材料になるでしょう。

3-4.子ども世帯との距離

子どもが家庭を持ち、別の場所で暮らしている場合は、どの程度の距離感を保てているのかを改めて見直してみると良いでしょう。近くに子どもが暮らしていれば、病気やケガなどで日常生活を送るのが困難なときに、手助けしてもらえます。

また、共働き世帯の増加によって孫の面倒を見るという役割を担う場合もあるでしょう。自分の家族が近くにいる場所のほうが安心できる場合は、一度家族でしっかりと話してみることも重要です。

一方で、子ども世帯が遠方にいる場合は、シニア向けの高齢者住宅を検討するなど生活に不便な部分を補えるサービスを活用することが大切です。何でも自分一人で頑張ろうとするのではなく、何が自分にできて、必要とするものは何かをきちんと洗い出してみましょう。

4.老後の住み替えの資金繰りに悩まないコツ

定年後間もなくのタイミングであれば、住宅ローンを組むことが可能です。しかし、老後の暮らしは収入そのものが減っていく面もありますので、資金繰りに悩む方も多いものです。老後の住み替えを果たすには、慎重に資金計画を立てていくことが重要だと言えます。

老後に住み替えを行うことでお金の面で悩まないコツとして、以下の4つの点が挙げられます。

以下の章で、それぞれのポイントについて、詳しく紹介します。

なお、現在所有しているマンションを売却して資金を作りたいと考えている方は、少しでも高く売るコツを知ることも大切です。築年数が経ったマンションを高く売るコツについては以下の記事で解説しています。

4-1.利用できるローンを確認しておく

退職金は老後の生活を支える大切な資金ですが、年金だけが収入となる状態だとそのままでは貯金を取り崩していく生活となるものです。退職金を受け取った段階では生活に余裕があったとしても、ある程度貯金が減ってしまったときの暮らしのイメージを持っておくことが重要です。

可能であれば、毎月少ない金額であっても安定した収入を確保しておくことが大切であり、10年後・20年後の暮らしも収入があるかどうかで変わってくるでしょう。

そのため、住み替えを行う際も利用する住宅ローンについてよく考えておく必要があります。毎月の返済の支払いに無理がないことや金利動向、返済期間などを細かくチェックしておきましょう。返済期間に関しては、「ローンの申し込み時に70歳未満であること」、「完済予定が80歳未満であること」などといった条件が付いてくる場合が多いです。

更に、住み替えるタイミングによっては返済期間が短くなり、借り入れられる金額も少なくなることも考慮しておきましょう。現役のときの感覚でローンを組むのではなく、老後の暮らしに合わせたローンの組み方を検討してみてください。

4-2.退職金や手持ちの現金預金は計画的に使う

住み替えに充てる費用は、毎月の生活費と照らし合わせて考えることが大事です。定年退職を迎え、年金が入ってくるタイミングで今後のライフプランを見直してみましょう。

理想としては、20年程度は困らないほどの預金を確保しておくことですが、1か月にかかる生活費次第で20年後に残っている金額も大きく変わります。毎月の最低支出額を割り出したうえで、削れるものがあるならば削ってしまい、シンプルな生活設計を立ててみましょう。

ただし、将来のことというのはその時点ではイメージが湧きづらいものですので、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するほうがスムーズな場合もあります。

病気や介護に対する備えや生活の基本設計について、気になる部分を早い段階で洗い出しておくことが大切です。

4-3.受け取れる年金額を把握しておく

老後は年金だけが収入となる場合も珍しくないため、どれくらいの金額を得られるのか把握しておくことが大切です。

例えば、国民年金であれば令和3年度からは月額の支給額が6万5,075円（満額）であり、年間では78万900円（満額）となります。ただし、この金額は満額の場合であり、保険料の納付月数によっては更に低い金額となります。

厚生年金の場合は現役時の収入などによって異なりますが、賞与を含んだ平均標準報酬が43万9,000円の方が40年間終業した場合、老齢厚生年金と夫婦2人分の老齢基礎年金を含む支給額は22万496円です。年間では264万5,952円となります。

年金の具体的な金額については、個別の状況によって違ってきますので、日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」などを確認してみましょう。大まかな年金額を把握しておくだけでも、老後の生活設計を考えるうえで役立つはずです。

4-4.不動産の一括査定サービスを利用する

住み替えを行うときは、今住んでいる自宅をどれくらいで売却できるかを知ることが重要です。売却価格の目安が分かることで、資金計画を立てやすくなります。

しかし、不動産会社によって得意とするジャンルは異なるため、複数の会社を比較して売却活動を依頼する会社を決めていくことが大切です。高値での売却相談に親身になってくれる、対応の良い不動産会社を見極めましょう。

不動産の一括査定サービスであるIELICO（イエリコ）を活用すれば、一度に最大6社まで査定依頼を行えます。ここでは、IELICOの基本的な特徴を詳しく紹介します。

IELICO（イエリコ）は、2001年（平成13年）に国内で初めて不動産の一括査定サービスを開始した、「不動産売却HOME4U（ホームフォーユー）」のサービスの1つです。20年以上にわたってサービスを提供してきた実績があり、累計で45万件以上の査定依頼の実績があります。

独自の審査基準で厳選した2,100社の優良企業を紹介しており、査定依頼を行うときには最大6社までを選択できます。査定依頼に必要な情報の入力は最短1分で完了でき、初めて利用する方でも簡単に操作することが可能です。

また、イエリコは情報サービス事業で業界最大手のNTTデータグループが運営を行っています。長年にわたって培ってきたセキュリティ技術によって、個人情報の取り扱いなど安心して利用していただける環境を整えています。

そして、自分に合った不動産会社を見つけるために、16,000件以上の経験者の口コミが役に立つことでしょう。不動産会社の強みや特徴を把握できますので、気になる不動産会社に査定を依頼することが可能です。

老後の住み替えを考えるときには、イエリコを活用して信頼できる不動産会社を見つけてみましょう。

まとめ

家の住み替えを行うときは、事前にしっかりと計画を立ててから取り組んでいく必要があります。

特に老後の住み替えでは、暮らしやお金の面で生じるさまざまな不安をうまく解消できるかがポイントになるでしょう。老後に優先したい希望や、老後の生活資金を整理して、ライフスタイルを向上できる住み替え計画を立てましょう。

イメージに合った住み替えを行うには、信頼できる不動産会社のアドバイスが欠かせません。不動産の一括査定サービスを通じて、何でも相談できる会社や担当者を見つけてみましょう。

老後に安心できる暮らしを手に入れるために、必要な準備を整えておくことが重要です。自分に合った住まいを得るためにも、早めに準備を進めてみてください。