不動産の所有者が変わるときに必要な「所有権移転登記」について、何をどうすればいいか分からない方も多いと思います。所有権移転登記をしないと法律上の所有者を変更できないため、売買や相続でトラブルに発展しかねません。
この記事では、所有権移転登記とは何なのか、タイミングや費用、必要書類、手続きの流れなどについて解説します。
この記事を読めば、相続発生時に必要な手続きや費用などがわかるため、急に相続が発生しても落ち着いて対応できるでしょう。
「売却を考えているけど、難しい話をたくさん読むのは苦手」「すぐに売却したい」という方は、この記事をざっくりと大枠で押さえた上で、まずは「IELICO(イエリコ)」を使って複数の不動産会社にまとめて売却査定を依頼してみることをおススメします。
1.所有権移転登記とは?

所有権移転登記とは、土地や建物といった不動産の所有者が売買や相続などによって変更した場合に、登記上の所有権を新たな所有者に移す手続きです。
所有権移転登記を行っていなかった場合、二次相続、三次相続のように相続が続くと、誰が相続人なのかがわからなくなり、誰が不動産を相続するかについての話し合いが困難になります。
上記のようなトラブルを回避する観点からも、不動産の所有権を取得後、すぐに所有権移転登記を行うことをおすすめします。
2.所有権移転登記が必要なタイミング

所有権移転登記が必要なタイミングは、主に以下の4つです。
- 不動産の売買をしたとき
- 不動産を相続したとき
- 不動産を贈与したとき・されたとき
- 離婚で財産分与するとき
それぞれのタイミングを詳しく見ていきましょう。
2-1.不動産の売買をしたとき
不動産を売買すると、物件の所有権が売主から買主へ移ります。
このときに所有権が移転したことを法的に証明するために所有権移転登記を行います。
売買の場合、引き渡し日に司法書士が立ち会って所有権移転登記を代行してもらうのが一般的です。
司法書士への報酬は、基本的に買い手が負担します。
所有権の移転など手続きに不安がある方は、適切なアドバイスをもらえる優良な不動産会社を見つけましょう。
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2-2.不動産を相続したとき
相続する遺産に不動産が含まれている場合は、相続人に所有権を変更する必要があります。
相続のため行う所有権移転登記のことを相続登記といったりします。
所有権移転登記を行わないまま放置すると、誰が相続人なのかを法的に証明できなくなるため、トラブルに発展するおそれがあります。
また、2024年度には相続によって不動産を取得した場合の所有権移転登記が義務化され、義務違反者は10万円以下の過料の対象となる予定なので注意してください。
2-3.不動産を贈与したとき・されたとき
不動産を贈与した・されたときも不動産の所有者が変わるので、所有権移転登記が必要です。
とくに贈与の場合は、速やかな所有権の移転登記が求められます。
所有権移転登記を先延ばしにしていると、贈与者が亡くなった際の相続財産に、贈与してもらったはずの不動産が含まれてしまいます。
贈与は口約束でも成立しますが、上記のようなトラブルを回避するためにも、できる限り早く所有権移転登記を行うことをおすすめします。
2-4.離婚で財産分与するとき
離婚で財産分与をする際、自宅をどちらか一方の単独名義に切り替える場合は、所有権移転登記が必要です。
共有名義を単独名義に切り替える場合は、当事者の立ち会いが求められます。
所有権移転登記は共同申請で、単独名義に切り替える場合には、共有者と共同で申請しなくてはならないためです。
住宅ローンを借りている場合は、住宅ローンの名義変更も必要になりますが、名義を移す側に残債を借り入れるだけの信用力がないといけません。
金融機関によっては、住宅ローン名義人以外に不動産の名義を移すことを禁止している場合もあるので注意しましょう。
3.所有権移転登記の費用

所有権移転登記には費用がかかるため、事前にいくら用意すればいいかを把握しておくことが大切です。
所有権移転登記にかかる主な費用は以下の3つです。
- 登録免許税
- 司法書士報酬
- 雑費(その他実費)
それぞれの費用を詳しく説明していきます。
3-1.登録免許税
登録免許税とは、登記手続きの際にかかる税金で、所有権移転登記にも発生します。
金額は以下の計算式で求められます。
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 税率
登録免許税の税率は、登記の目的や対象によって以下のように異なります。
【土地】
内容 | 税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
売買 | 1,000分の20 | 1,000分の15(令和5年3月31日まで) |
相続など | 1,000分の4 | – |
その他(贈与など) | 1,000分の20 | – |
【建物】
内容 | 税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
売買など | 1,000分の20 | 1,000分の3(令和6年3月31日まで) |
相続など | 1,000分の4 | – |
その他(贈与など) | 1,000分の20 | – |
軽減税率が適用される主な要件
- その者が主として居住の用に供する家屋であること
- 住宅の新築または引き渡しから1年以内に登記をすること
- 床面積が50㎡以上であること
- 市町村が発行する住宅用家屋証明書を取得していること
3-2.司法書士報酬
所有権移転登記を司法書士に依頼した場合は、報酬を支払わなくてはなりません。
報酬は依頼する司法書士によって4~7万円程度と異なります。
相続の場合は遺産分割協議書の作成、離婚の場合は離婚協議書の作成が必要になります。これらの書類の作成を司法書士に依頼した場合、所有権移転登記のみを依頼する場合よりも報酬が高額になるということを覚えておきましょう。
3-3.雑費(その他実費)
所有権移転登記に必要なその他の書類を準備する際にかかる費用は、以下の通りです。
内容 | 費用 |
---|---|
登記事項証明書 | 600円 |
印鑑登録証明書 | 300円程度 |
固定資産評価証明書 | 400円程度 |
住民票 | 300円程度 |
戸籍謄本 | 450円程度 |
どのような目的で所有権移転登記を行うかによって費用が異なるので注意してください。
3-4.所有権移転登記の費用を安く抑える方法
所有権移転登記にかかる費用は意外と高額であるため、少しでも費用を安く抑えたい方は、以下のいずれかの方法による手続きをおすすめします。
- 自分で手続きをする
- 見積もりを複数取る
それぞれの方法を詳しく解説していきます。
3-4-1.自分で手続きをする
所有権移転登記は一般の方でも手続きが可能です。
自分で所有権移転登記を行えば司法書士に支払う報酬を削減できるため、その分の費用を抑えることができます。
ただし法令に基づいた手続きが必要なため、ある程度の専門知識が必要になります。
書類作成の方法を調べたり、書類を取り寄せたりと、手間がかかること理解したうえで検討してみましょう。
3-4-2.見積もりを複数取る
手間をかけずスムーズに所有権移転登記を行いたい方は、司法書士への依頼は必須でしょう。
司法書士に依頼すれば当然報酬が必要になりますが、依頼する司法書士によって報酬額は異なります。
複数の司法書士に見積もりを依頼し比較し、安い司法書士を探してみましょう。
ただし、見積もり額が安すぎる場合は、代行してくれる業務の範囲が狭い可能性もあります。
見積もりを比較する際は、司法書士が行う業務まで確認するようにしましょう。
4.所有権移転登記に必要な書類一覧

所有権移転登記に必要な書類は、移転理由によって一部異なります。
以下では、所有権移転登記を行う理由別に必要な書類を紹介します。
- どの場合でも必要な書類
- 売主が贈与した場合に必要な書類
- 買主が贈与を受ける場合に必要な書類
- 遺産相続の場合に必要な書類
4-1.どの場合でも必要な書類
不動産の情報が記載されている登記事項証明書は登記の移転理由にかかわらず必要です。
名称 | 概要 | 取得費用 |
---|---|---|
登記事項証明書 | 法務局で取得 | 600円 |
法務局の窓口請求の場合は600円かかりますが、オンライン請求の場合で窓口受取を選択すれば480円、郵送受取を選択すれば500円と手数料を抑えられます。
4-2.売主が贈与した場合に必要な書類
売買や贈与で、売主になった場合に必要な書類は以下の通りです。
名称 | 概要 | 取得費用 |
---|---|---|
登記識別情報または登記済証 | 不動産の所有者が保管 | ‐ |
印鑑登録証明書 | 各市区町村の役所で取得可能 | 300円程度 |
固定資産評価証明書 | 各市区町村の役所で取得可能 | 400円程度 |
身分証明書 | 当人が保管 | ‐ |
不動産登記申請書 | 法務局やHPで取得可能 | 無料 |
委任状 | 法務局やHPで取得可能 | 無料 |
登記原因証明情報 | 売買契約書や贈与契約書 | ‐ |
上記以外に、印鑑登録証明書と同じ印鑑が必要です。
4-3.買主が贈与を受ける場合に必要な書類
売買や贈与で、買主になった場合に必要な書類は以下の通りです。
名称 | 概要 | 取得費用 |
---|---|---|
住民票 | 各市区町村の役所で取得可能 | 300円程度 |
身分証明書 | 当人が保管 | ‐ |
不動産登記申請書 | 法務局やHPで取得可能 | 無料 |
委任状 | 法務局やHPで取得可能 | 無料 |
登記原因証明情報 | 売買契約書や贈与契約書 | ‐ |
上記以外に、委任状に押印するための印鑑を用意しておく必要があります。
4-4.遺産相続の場合に必要な書類
遺産相続の場合に必要な書類は以下の通りです。
名称 | 概要 | 取得費用 |
---|---|---|
相続人全員の戸籍謄本 | 各市区町村の役所で取得可能 | 450円程度 |
死亡した方の出生から死亡までの戸籍謄本または除籍謄本 | 各市区町村の役所で取得可能 | 戸籍謄本:450円程度 除籍謄本:750円程度 |
死亡した方の住民票の除票 | 各市区町村の役所で取得可能 | 300円程度 |
住民票の写し(相続人全員) | 各市区町村の役所で取得可能 | 300円程度 |
固定資産評価証明書 | 各市区町村の役所で取得可能 | 400円程度 |
相続関係説明図 | ‐ | ‐ |
登記申請書 | 法務局 | 無料 |
相続人全員分の印鑑証明書 | – | – |
遺産分割協議書 | – | – |
遺言書に基づく場合には、遺言書と検認証明書が求められます。
検認証明書は家庭裁判所に申し立てを行い(800円)、検認証明書を発行(150円)してもらいます。
5.所有権移転登記手続きの流れ

所有権移転登記を司法書士に依頼する場合と自分で手続きする場合の流れについて、詳しく説明していきます。
- 司法書士に依頼する場合
- 自分で手続きする場合
5-1.司法書士に依頼する場合
司法書士に依頼する際の流れは以下の通りです。
- 事前準備・依頼先選定
- 司法書士に必要な書類を提出
- 司法書士が書類を作成して提出
- 審査
- 登記完了証と登記識別情報通知書を受け取る
- 支払い
5-1-1. 事前準備・依頼先選定
まずは複数の司法書士の見積もりを取って、依頼する司法書士を選びましょう。
見積もりを比較する際は、報酬額だけでなく司法書士が担う業務の範囲についても確認しましょう。
見積もりが他社と比べて明らかに安い場合、対応してくれる業務が少ない可能性もあります。
また、司法書士の人柄も大切です。
わからないことを丁寧に教えてくれたり、しっかりと話しを聞いてくれる司法書士を選びましょう。
5-1-2.司法書士に必要な書類を提出
司法書士に所有権移転登記に必要な書類を提出します。
どんな書類の記入や提出が必要なのかは、司法書士が説明をしてくれます。
また、書類を一部収集してくれる司法書士もいます。
準備する必要書類については「4.所有権移転登記に必要な書類一覧」をご確認ください。
5-1-3.司法書士が書類を作成して提出
司法書士が申請書を作成して必要書類を添えて法務局に提出します。
特に依頼者が行うことはありません。
5-1-4.審査
審査には1~2週間程度かかります。
書類に不備があった場合は、司法書士に法務局から訂正や再提出を求められます。
5-1-5. 登記完了証と登記識別情報通知書を受け取る
所有権移転登記が無事に完了した場合は、司法書士から完了報告を受けます。
その際に司法書士から登記完了証と登記識別情報通知書を受け取ります。
5-1-6.支払い
書類を受け取って問題がなければ、司法書士が請求書を作成し、依頼者は報酬を支払います。
司法書士によっては、所有権移転登記完了後も依頼者の相談に応じるアフターフォローを実施しているところもあります。
5-2.自分で手続きする場合
自分で手続きする際の流れは以下の通りです。
- 法務局で必要な書類や手順を確認する
- 申請書の様式を手に入れる
- 必要書類を揃える
- 申請書を作成して提出する
- 審査
- 登記完了証と登記識別情報通知書を受け取る
5-2-1.法務局で必要な書類や手順を確認する
法務局の相談窓口で、所有権移転登記に必要な書類や手順について確認します。
管轄の法務局を訪問するか、電話で問い合わせてみましょう。
5-2-2.申請書の様式を手に入れる
所有権移転登記に必要な申請書の様式と記載例は、以下の法務局のサイトからダウンロードできます。
法務局「不動産登記の申請書様式について」
5-2-3.必要書類を揃える
所有権移転登記に必要な書類を揃えます。
提出書類に漏れがある再提出が必要になり、余計に時間がかかってしまうので、提出前に法務局で確認してみましょう。
準備する必要書類については「4.所有権移転登記に必要な書類一覧」をご確認ください。
5-2-4.申請書を作成して提出する
法務局のサイトの記載例を確認しながら申請書を作成します。
申請書の作成が完了した後は、申請書と必要書類を法務局に提出します。
5-2-5.審査
申請書が受理されると審査が始まり、1~2週間程度で登記が完了します。
書類に不備があった場合は法務局から訂正や再提出を求められます。
5-2-6. 登記完了証と登記識別情報通知書を受け取る
所有権移転登記が完了すると、登記完了証と所有権移転後の登記識別情報通知書が交付されます。
受取方法は、窓口と郵送の2種類から選択します。
窓口の場合は、申請書を作成する際に使用した印鑑と本人確認書類が必要です。
郵送の場合は、申請時に返信料金分の切手を貼った返信用封筒を同封しておく必要があります。
不動産売却の全体の流れは以下の記事で詳しく解説しています。
この記事のポイント まとめ
所有権移転登記が必要なタイミングは以下の通りです。
- 不動産の売買をしたとき
- 不動産を相続したとき
- 不動産を贈与したとき・されたとき
- 離婚で財産分与するとき
詳しくは「2.所有権移転登記が必要なタイミング」をご覧ください。
所有権移転登記手続きの流れは以下の通りです。
【司法書士に依頼する場合】
- 事前準備・依頼先選定
- 司法書士に必要な書類を提出
- 司法書士が書類を作成して提出
- 審査
- 登記完了証と登記識別情報通知書を受け取る
- 支払い
【自分で手続きする場合】
- 法務局で必要な書類や手順を確認する
- 申請書の様式を手に入れる
- 必要書類を揃える
- 申請書を作成して提出する
- 審査
- 登記完了証と登記識別情報通知書を受け取る
詳しくは「5.所有権移転登記手続きの流れ」をご覧ください。
この記事の編集者

IELICO編集部
家を利口に売るための情報サイト「IELICO(イエリコ)」編集部です。家を賢く売りたい方に向けて、不動産売却の流れ、税金・費用などの情報をわかりやすくお伝えします。掲載記事は不動産鑑定士・宅地建物取引士などの不動産専門家による執筆、監修を行っています。
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