マンションの固定資産税や相続税を調べるなかで、評価額という言葉を目にした方も多いのではないでしょうか。
評価額とは、固定資産税や相続税を算出する際の基準となる価格です。マンションにはさまざまな評価額があり、目的に応じて使用するものが異なります。
そこで、本記事では評価額の調べ方や各種税金の計算方法を解説します。本記事を読んでいただければ、評価額への理解が深まり、適切に使い分けられるでしょう。
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目次
1.マンションの評価額とは

マンションの評価額とは、固定資産税や相続税を算出する際の基準となる「不動産評価額」のひとつで、大きく分けると6種類あります。各評価額の用途は、以下の表を参考にしてください。
用途 | 必要な評価額 |
---|---|
固定資産税(土地・建物)を調べる | 固定資産評価額 |
相続税(土地部分)や贈与税を調べる | 相続税評価額 |
マンションを売買する | 実勢価格 |
あらゆる評価額の基準となる | 地価公示価格 |
火災保険の保険金額を決める | 建物評価額 |
マンションの価値を証明する | 不動産鑑定評価額 |
このようにさまざまな評価額があるため、用途に応じて何を調べればいいのかを把握しましょう。
2.6種類のマンション評価額

前章で解説した通り、マンションの評価額は6種類あります。
- 固定資産税評価額
- 相続税評価額
- 実勢価格
- 地価公示価格
- 建物評価額
- 不動産鑑定評価額
本章では各評価額の概要と用途について詳しく解説します。
2-1.固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、マンションの固定資産税や都市計画税の基準となる価格です。固定資産税や都市計画税は毎年納める必要があるため、購入や相続の際には、必ず確認しておきましょう。
なお、マンションの固定資産税評価額の調べ方は、固定資産税の納税通知書を確認するだけです。
ほかにも、不動産を購入した後に一度だけ納める不動産取得税や、登記する際の登録免許税も固定資産税評価額が基準となります。
各種税金の計算方法は以下の通りです。
【本則】
- 固定資産税:固定資産税評価額×1.4%
- 都市計画税:固定資産税評価額×0.3%
- 不動産取得税:固定資産税評価額×4%(土地と住宅の場合は3%)
- 登録免許税(所有権移転):固定資産税評価額×2%
上記の計算式はあくまでも本則です。新築住宅や住宅用地の場合は軽減税率が適用されます。たとえば、平成31年4月1日から令和5年3月31日までの所有権移転であれば、登録免許税の税率は本則の2%ではなく、1.5%が採用されます(土地の売買のみ)。
固定資産税評価額を決定するのは各自治体です。総務省が定めた固定資産評価基準にもとづき、1月1日時点の価格を自治体の担当者が計算しています。
評価は3年に一度見直されるため、固定資産税や都市計画税は変わる可能性があると考えましょう。
なお、固定資産税評価額は土地と建物に分けて計算されます。
土地は公示価格の約70%が目安です。建物に関しては、再調達価額(同じ建物を新築した場合にかかる価格)と経年減点補正率(築年数の経過によって生じる減価率)にもとづいて計算されます。
構造や建材によって固定資産税評価額は変わるため、グレードの高い建物のほうが固定資産税評価額も高くなる傾向にあります。
2-2.相続税評価額
相続税評価額とは、相続税や贈与税の基準となる価格です。国税庁が毎年1月1日時点の価格を調査し、例年7月に公表しています。
相続税評価額の目安は、公示価格の約80%です。評価方法は2つに分けられます。
- 路線価方式
- 倍率方式
路線価方式とは、路線価が定められている地域の評価方法で、道路に面する標準的な宅地1平米あたりの価額を千円単位で表しています。
具体的な計算方法は以下の通りです。
路線価と面積だけでなく、奥行きの長さなども計算の基準になります。そのため、同じ面積の正方形の土地と長方形の土地を比較すると、正方形の土地のほうが評価額が高くなる傾向にあります。
一方、倍率方式とは路線価が定められていない地域の評価方法です。倍率方式では、固定資産税評価額に地域ごとに定められた一定の倍率を乗じて計算します。
2-3.実勢価格
実勢価格とは、マンションが市場で取引される価格です。
実際に取引される価格なので「時価」や「市場価格」と呼ぶこともあります。マンションを売却する際にはいくつかの価格があるため、それぞれの違いを押さえておきましょう。
- 査定価格:不動産会社が算出する売却見込み価格
- 売出し価格:マンション売却時に設定する売主の売却希望価格
- 成約価格:売主と買主の合意で売買契約が成立する際の価格
上記のうち、実勢価格とは成約価格を指します。
中古マンションの売却では、買主から価格交渉が入ることも少なくありません。たとえば、3,500万円でマンションを販売しているときに、買主から3,000万円で購入申し込みが入ったとしましょう。
交渉の結果、3,200万円で売買が成立した場合、3,200万円が実勢価格となります。
実勢価格は売主と買主の合意によって決めるため、他の評価額をもとに正確に計算するのは困難です。実勢価格を調べたい場合は、以下のサイトを確認しましょう。
- 土地総合情報システム
- レインズマーケットインフォメーション
- 不動産ポータルサイト
特におすすめなのはレインズマーケットインフォメーションです。レインズマーケットインフォメーションでは、全国指定流通機構連絡協議会が保有する日本全国の成約価格を調べられます。
2-4.地価公示価格
地価公示価格とは、国土交通省土地鑑定委員会が調査した、1月1日時点の標準地の価格です。標準地とは、地価公示価格を算定するために定められた地点で、2022年時点では全国に26,000地点あります。
地価公示価格の主な役割は、以下の通りです。
- 一般の土地の取引に対して指標を与えること
- 不動産鑑定の規準となること
- 公共事業用地の取得価格算定の規準となること
- 土地の相続評価および固定資産税評価についての規準となること
- 国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること 等
地価公示価格はあらゆる評価額の基準となるため、価格が大きく変動した年には、他の評価額も変動する可能性があります。地価公示価格は例年3月に公表されるため、情報をチェックしておきましょう。
標準地の地価公示価格は、国土交通省の「標準地・基準地検索システム」で調べられます。
また、地価公示価格と似た役割を持つ「基準地価」という価格があります。基準地価は各都道府県が毎年7月1日時点の土地価格を調査したものです。
地価公示価格の調査日と半年間の差があるため、地価公示価格を補う役割があります。
2-5.建物評価額
建物評価額とは、火災保険に加入する際に設定する評価額で、火災保険評価額とも呼びます。
建物評価額をもとに、火災や自然災害で被害を受けたときの保険金額を設定します。建物評価額には2つの基準があるため、それぞれの違いを押さえておきましょう。
- 新価(再調達価額):建物に損害が生じた際に、その建物と同等のものを新築する際にかかる金額
- 時価:経年による建物価値の減少分を、再調達価額から差し引いた金額
近年の火災保険は再調達価額で加入するのが一般的です。
なお、マンションの建物評価額は専有部分のみの価格となります。具体的な計算方法は以下の通りです。
誤って土地価格を算入しないように注意しましょう
2-6.不動産鑑定評価額
不動産鑑定評価額とは、国家資格を持つ不動産鑑定士が、鑑定評価基準に基づいて算出する評価額です。
通常の不動産会社が行う査定とは異なるため注意しましょう。一般的なマンション売却では、不動産鑑定士による鑑定評価は必要ありません。
しかし、複雑な事情による売却や遺産分割時に必要になる場合があります。具体的には以下の通りです。
- 相続で公平に遺産分割したいとき
- 代償分割の価格を決めたいとき
- 生前贈与をするとき
- 離婚で財産分与をするとき
- 不動産を交換するとき
- 不動産を担保にお金を貸す・借りるとき 等
不動産鑑定評価額や、その算出方法が記載された査定書は、公的資料として裁判などでも用いられます。
不動産鑑定評価額を調べるには、不動産鑑定士に査定を依頼する必要があります。不動産会社に依頼する査定と違い、有料となる点に注意しましょう。
3.マンションの固定資産税の調べ方

6種類のマンションの評価額がわかったところで、本章では特に重要度の高い固定資産税の調べ方を解説します。
固定資産税の調べ方は以下の3つです。
- 納税通知書を確認する
- 不動産販売会社や不動産仲介会社に確認する
- 公示価格から計算する
このなかで最も手軽で確実なのは、納税通知書を確認することです。納税通知書が手元にあれば、固定資産税評価額だけでなく、納税額まで一度に把握できます。
不動産会社に確認することもできますが、不動産会社は固定資産評価証明書に記載されている評価額しか把握していない場合があります。
評価額をもとに計算できますが、数円単位で実際の納税額と差異が生じることもあるため、納税通知書を確認するのが最も確実な方法でしょう。
また、公示価格から計算することも可能ですが、複雑な計算方法を理解しなければいけません。計算式は「2-1.固定資産税評価額」で解説しています。
4.マンションの相続税の調べ方

不動産を相続した方のなかには、いくらの相続税がかかるのか不安な方も多いでしょう。
本章ではマンションの相続税の調べ方を、4ステップに分けて解説します。
- 土地の評価額を計算する
- 建物の評価額を調べる
- 土地と建物の評価額を足す
- 評価額から相続税を計算する
4-1.土地の評価額を計算する
マンションの相続税を調べるには、まず土地の相続税評価額を計算しましょう。具体的な流れは以下の通りです。
- 路線価を調べる
- マンションの面積を調べる
- マンション全体の相続税評価額を計算する
- 敷地権割合に応じて相続税評価額を計算する
土地の相続税評価額を求めるには、路線価を調べる必要があります。路線価は国税庁が運営する「財産評価基準書」や、一般財団法人資産評価システム研究センターが運営する「全国地価マップ」で調べられます。
サイトを開いたら調べたいマンションの住所を検索し、前面道路の路線価を確認しましょう。
路線価図には「215D」のように、数字とアルファベットが記載されています。路線価図は千円単位で記載されているため「215D」の場合の路線価は「1平米あたり215,000円」です。アルファベットは借地権割合を指します。
- A:90%
- B:80%
- C:70%
- D:60%
- E:50%
- F:40%
- G:30%
土地が借地の場合は、土地全体の相続税評価額に借地権割合をかけて借地の評価額を求めます。
路線価が指定されていないエリアは、固定資産税評価額に評価倍率をかけることで、相続税評価額を求められます。評価倍率は地域ごとに定められているため、国税庁が運営する「財産評価基準書」で確認しましょう。
次にマンション全体の土地面積を調べましょう。土地面積は購入時の売買契約書や登記簿謄本に記載されています。路線価とマンションの土地面積を以下の式に当てはめれば、マンションの土地全体の相続税評価額がわかります。
続いて、敷地権割合に応じた相続税評価額を計算します。敷地権割合とは、各区分所有者が持つ敷地の利用権です。専有部分の面積に応じて割合が定められています。
敷地権割合も売買契約書や登記簿謄本で確認できます。確認できたら以下の式に当てはめてみましょう。
これで土地の評価額の計算は完了です。
4-2.建物の評価額を調べる
建物の評価額は、固定資産税評価額と同様です。
納税通知書に建物(家屋)の評価額が記載されているため、そちらを確認しましょう。しかし、相続したマンションが賃貸中の場合は評価額が30%減額されます。
- 空室の相続税評価額=固定資産税評価額(家屋)
- 賃貸中建物の相続税評価額=固定資産税評価額(家屋)×70%
賃貸中の建物は評価額が30%抑えられるため、空室の建物よりも相続税を圧縮できます。
4-3.土地と建物の評価額を足す
土地と建物の評価額を求めた後は、それらを合算しましょう。
これでマンション全体の相続税評価額を求められました。しかし、相続人の数などで相続税は変動します。この評価額をもとにして、相続税を計算してみましょう。
4-3.評価額から相続税を計算する
合算した相続税評価額をもとに、相続税を計算します。
相続税には基礎控除があるため、相続税評価額が基礎控除の範囲内であれば相続税は発生しません。
※法定相続人:民法の規定により相続人となる人
たとえば、法定相続人の数が2人の場合、4,200万円までは非課税となります。基礎控除を上回った分の相続財産に対しては、以下の税率が課されます。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円以下 | 10% | ― |
3,000円以下 | 15% | 50万円 |
5,000円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
1億円超 | 55% | 7,200万円 |
基礎控除を引いた相続財産が2,000万円の場合、相続税の計算式は以下の通りです。
ここまでの内容をもとに、相続税を計算してみましょう。
詳しい相続の手続きについては『 家の相続から名義変更までの手順!かかる税金やトラブルを回避するポイント 』をご覧ください
この記事のポイント
マンション評価額の概要は以下の通りです。
- 固定資産税や相続税を算出する際の基準となる価格
- 大きく分けると6種類
- 用途に応じて用いる評価額が異なる
詳しくは「1.マンションの評価額とは」をご覧ください。
マンションの固定資産税は以下の方法で調べられます。
- 納税通知書を確認する
- 不動産販売会社や不動産仲介会社に確認する
- 公示価格から計算する
詳しくは「3.マンションの固定資産税の調べ方」をご覧ください。
マンションの相続税を調べる流れは以下の通りです。
- 土地の評価額を計算する
- 建物の評価額を調べる
- 土地と建物の評価額を足す
- 評価額から相続税を計算する
詳しくは「4.マンションの相続税の調べ方」をご覧ください。
この記事の編集者

IELICO編集部
家を利口に売るための情報サイト「IELICO(イエリコ)」編集部です。家を賢く売りたい方に向けて、不動産売却の流れ、税金・費用などの情報をわかりやすくお伝えします。掲載記事は不動産鑑定士・宅地建物取引士などの不動産専門家による執筆、監修を行っています。
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