「住宅ローンがあるけど引っ越したい」、離婚のため「住宅ローン中の家を手放したい」、そう思っても本当に実行ができるのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
結論からいえば、住宅ローンが残っている状態であっても、家を売却することは可能です。
ただし、売却後の返済や資金計画などをよく考えて取り組んでいく必要があります。この記事では、住宅ローンが残っている状態で家を売るときの手続き方法や気をつけておきたいポイントなどを解説します。
家の売却について基礎から詳しく知りたい方は『【入門編】不動産売却の全知識』『家を売るならまずやるべきこと』も合わせてご覧ください。
- 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
- 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格”を見つけましょう
- 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます
目次
1.住宅ローン中の家を売るならまず現状を知る
家を売ることを考えるときは、まず住宅ローンの状況を確認する必要があります。なぜなら、住宅ローンが残っている不動産を売却するためには、引き渡し時までに完済し、抵当権を抹消しておく必要があるためです。
抵当権とは、万が一住宅ローンを返済できなかったときに備えて不動産を担保にする権利のことであり、住宅ローンを利用するときには原則として融資を行った金融機関を抵当権者として設定する必要があります。抵当権は非常に強力な権利であるため、引き渡し前に抹消ができなければ、基本的には買い主を見つけることができません。
しかし、抵当権抹消はあくまで「引き渡しまで」に行えば問題がないため、売却代金を完済に充てることも可能です。これは、言い換えれば、住宅ローンが残っていても家の売買契約までは進められることになります。
そのため、住宅ローン中の不動産を売却するためには、「住宅ローン残高がどのくらいか」を調べておき、売却代金で完済できるかチェックすることが大切です。
1-1.住宅ローンの残債を確認する
住宅ローンの残高は、金融期間から発行される返済予定表を通して確認することができます。
しかし、繰り上げ返済などを行っていた場合には、内容の変更が反映されていない可能性も考えて、金融機関に照会するのが確実です。
売却計画を立てるうえでは、正確な残高を把握する必要がありますので、金融機関の窓口を通して最新の状況をチェックしておきましょう。なお、インターネットバンキングなどに加入している方は、インターネット上で確認することもできます。
1-2.売却額がいくらになるか査定する
住宅ローン残高(残債額)を確認したら、つぎに、所有している家がいくらで売却できるか査定をしましょう。
査定は、売買を仲介してくれる不動産会社に依頼するのが一般的ですが、まずは下記のサイトを利用して、自分で相場を把握しておくのがおすすめです。
サイト名 | サイトで調べられること |
---|---|
レインズマーケットインフォメーション | 国土交通省指定の不動産流通機構が運営。全国の中古戸建てやマンションの成約価格が、築年数・エリア・成約時期等の条件別で調査できる。 |
土地総合情報システム | 国土交通省の運営サイト。不動産購入者へ実際にアンケートを行って収集した取引価格を閲覧することができる。 |
中古住宅専門サイト(中古住宅HOME4U) | 不動産会社各社が運営する、中古住宅情報のサイトでも相場を調べることができる。実際に成約した金額ではなく売却希望価格であることに注意。 |
売却を急いでいる場合は、複数の不動産会社に一括で査定を依頼できる「IELICO(イエリコ)」を活用しましょう。
「IELICO」は、大手企業から地域密着型の企業まで、全国約2,100社と提携しています。複数の優良企業から査定価格をまとめて取り寄せることができるので信頼できる不動産会社を探したい方はぜひ利用することをおすすめします。
1-3.売却しても住宅ローンを一括返済できないケースもある
不動産を購入してからすぐに売却することになったケースなど、場合によっては住宅ローンが売却で一括返済できないこともあります。
この場合の対応策としては、スケジュールにゆとりがあるのであれば、残債が減るまで住み続けてから改めて売却を検討するのも1つの方法です。
しかし、不動産は一般的に築年数が経過すればするほど価値が低下してしまう性質を持っているため、売却のタイミングは慎重に考える必要があります。売却代金で完済できない場合の対処法には、ほかにも後述するいくつかの方法がありますので、選択肢の内容を確認しながら売却プランを練り直しましょう。
2.オーバーローンの場合に売却するには
家の売却代金で住宅ローンを完済できない状態を「オーバーローン」と呼びます。例えば、「住宅ローン残債が2,000万円であったが、物件は1,000万円の売却額にしかならない」といったケースです。
このようなオーバーローンに陥ってしまう場合は、不足する資金を手当てする何らかの対処を検討し、方針を決めましょう。引き渡しまでに完済できるように、資金を補う手続きを進めなければなりません。
具体的な対処の方法としては、以下の3通りの方法があります。
家の売却代金で住宅ローンが完済できないときの3つの対処
- 貯蓄を返済に充てる方法
- 住み替えを行う方法
- 任意売却を選ぶ方法
それぞれメリット・デメリットや実行の難易度は異なりますので、オーバーローンになってしまう可能性がある場合には、あらかじめ内容をきちんと把握しておくことが大切です。
2-1.貯蓄を返済に充てる
もっともシンプルな方法は、預貯金などの自己資金で差額を埋め合わせる方法です。住宅ローン残債と売却代金との差額がそれほど大きくない場合は、貯蓄を切り崩すことで問題なく売却を進められるケースも多いです。
しかし、不動産を売却する際には各種手数料や税金などの実費がかかりますので、その分の費用は手元に残しておく必要があります。また、売却後の生活を考慮するうえでも、ある程度の自己資金はとっておきたいものです。
そのため、差額と自己資金のバランスに目を向けながら、慎重に検討しましょう。
2-2.住み替え(買い替え)ローンを利用する
旧居を売却して新居へ住み替えを行う場合には、「住み替えローン」の利用によって、オーバーローンでも売却できる可能性があります。住み替えローンとは、マイホームの買い換え時に「返済しきれなかった旧居のローン残債を新居購入時の新規ローンに上乗せする」方法です。
住宅ローンだけが残った家であっても、住み替えローンには、「今よりも好条件の住宅ローンに組み替えられる可能性がある」、「手持ち資金がなくても住み替え可能」といったメリットがあります。しかし、借入額が大きくなるため、当然ながら住み替え後の住宅ローンの負担が膨らんでしまう点には注意が必要です。
また、借入額が増えることで融資の審査基準も厳しくなりますので、収入や借入時年齢、完済年齢などが原因でそもそも利用できないケースもあります。
住み替えローンについて詳しくは以下の記事で解説しています。参考にしてください。
住み替えを行う場合は、住み替えローンが融資される前に転職を行わないよう注意しましょう。
2-3.任意売却を選ぶ
「任意売却」とは、住宅ローンの返済が滞ってしまったときに、金融機関の合意を得て差し押さえ前に売却を済ませる方法です。また、オーバーローンであってもどうしても売却しなければならず、加えてその他の方法で解決できない場合、最終的には任意売却が有効な選択肢となります。
任意売却は、住宅ローンが払えない場合にや無負えず売却をする手段です。。本来は積極的に活用するものではありません。なぜなら、任意売却を利用しますと、個人信用情報に住宅ローンの返済不能に陥った事実が記載されてしまうためです。
つまり、任意売却の選択には、ブラックリストに載ってしまうというデメリットが伴うのです。ただし、返済ができないままの状態を放置しておきますと、最終的には差し押さえ・競売へと手続きが進んでしまいます。
競売には任意売却と比べて「売却額が下がりやすい」、「近隣に差し押さえの事実を知られやすい」といった重大なデメリットがありますので、返済が苦しくなり始めたら任意売却を検討することも大切です。
2-4.オーバーローンでも利用できる税金の特例
オーバーローンの状態で家を売却すれば、売却損が発生します。確定申告は基本的に、売却益が出た場合に行うものですが、売却損が発生したときも確定申告を行うほうが税負担を軽減できる場合があります。
「居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が利用できる可能性がありますので、以下の適用要件をチェックしておきましょう。
- マイホームを売却すること
- 売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えていること
- 売却した物件について、売買契約日の前日までにおいて住宅ローンが10年以上の残っていること
- 物件の売却代金がローン残債を下回っていること など
この特例制度を利用できますと、売却損となった部分を給与所得など他の所得から控除することが可能です。2021年(令和3年)12月31日までに、住宅ローンが残っているマイホームについてローン残債を下回る金額で売却したときに適用されます。
他の所得と合算して計算する仕組みを「損益通算」と言い、損益通算を行っても控除しきれなかった分は、翌年以降3年間は繰越控除が行えます。新たにマイホームを取得しない場合でも適用されますので、適用要件に当てはまる場合は積極的に活用してみましょう。
オーバーローンでは、売却金額以外から住宅ローン残債分を賄わなくてはいけません。
住宅ローンが完済できない場合は、売却自体ができないので、計画的な返済で次に解説するアンダーローン状態になるようにしましょう。
3.アンダーローンの売却方法
家の売却代金で住宅ローンを完済できる状態を「アンダーローン」と呼びます。例えば、「住宅ローン残債が1,000万円あるものの、物件は2,000万円で売却できる」といったケースを指し、アンダーローンであれば不動産の売却は問題なく進めることができます。
ここでは、アンダーローンの場合の売却の流れを見ていきましょう。
アンダーローンの場合の売却手順
- 査定依頼
- 媒介契約を結ぶ
- 買い主を募る
- 内覧対応
- 売買契約を交わす
- 決済・引き渡し
記事の冒頭でも解説したように、住宅ローンが残っている物件を売る際には、引き渡しまでに残債の返済と抵当権抹消登記の手続きを済ませておく必要があります。本来であれば、住宅ローンを預貯金などで返済してから売却手続きに入るのが望ましいですが、残債を自己資金で支払えるケースはそれほど多くありません。
そこで、アンダーローンの場合は、「引き渡し当日にまとめて売却とローンの完済を行う」といった方法で売却手続きを進めます。具体的には、引き渡し日に金融機関の担当者と司法書士が同席して、住宅ローンの完済と抵当権抹消登記手続き、物件の引き渡しをまとめて済ませてしまうという方法です。
手続きの流れ自体は少し複雑に見える部分もありますが、不動産の取引においてはわりと一般的な流れであり、住宅ローン残債のある物件を売るときの理想的な形とも言えます。
4.ローン中の家を売る際に使える税金特例
4-1.オーバーローンの場合
オーバーローンでの売却は、売却損がでやすい状況です。
売却損が出た場合は、確定申告で申請することで『居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例』を利用できる場合があります。
損益通算とは、家の売却損を、他の所得と合算できる特例です。売却損の分だけ、他の所得が少なくなるため、所得税と住民税が安くなります。
繰越控除は、損益通算で相殺しきれなかった分の売却損を、翌年以降3年間にわたって繰り越す特例です。
『居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例』の利用に当たっては、以下のような適用要件を満たす必要があります。
- マイホームを売却すること
- 売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えていること
- 売却した物件について、売買契約日の前日までにおいて住宅ローンが10年以上の残っていること
- 物件の売却代金がローン残債を下回っていること など
詳細は『国税庁:No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合』をご覧ください。
4-2.アンダーローンの場合
売却益が発生した場合は、売却益に対して譲渡所得税(所得税と住民税)がかかります。
譲渡所得税は20.315%~39.63%の税率がかかる高い税金できすが、以下の特例で節税することができます。
- 3,000万円特別控除の特例
- 10年越え所有軽減税率の特例
(※アンダーローン状態での売却でも、売却損が出た場合は、前項で解説した『居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例』を利用できます。)
3,000万円特別控除の特例は、売却益(譲渡所得)を最大3,000万円まで控除できる特例です。言い換えると、売却益3,000万円までは非課税にできます。
10年越え所有軽減税率の特例は、所有期間が10年を超えている家を売却した際に適用できる軽減税率で、譲渡所得税率を14.21%にできます。
上記いずれの特例も、前提としてマイホームの売却である必要があります。
その他、細かい適用要件につきましては、以下から国税庁のホームページをご覧ください。
参考:3,000万円特別控除の特例『国税庁:No.3302 マイホームを売ったときの特例』
参考:10年越え所有軽減税率の特例『国税庁:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例』
5.離婚で住宅ローン中の家を売却する際の注意点
住宅ローンを返済中の家を売る理由のひとつに、離婚が挙げられます。離婚により戸建てやマンションを売却する際には、以下の3つの点に注意しましょう。
離婚で住宅ローン中の家を売る際に注意すべきこと3つ
- 住宅ローン残債の財産分与と対策
- ペアローン(共有名義)は解消が難しい
- 離婚した事実だけでは連帯保証人は解除されない
それぞれどのような点に注意が必要か、対策も併せて解説していきます。
5-1.住宅ローン残債の財産分与と対策
一般に、離婚の際には、夫婦の共有財産を分け合う「財産分与」という手続きを行います。「共有財産」とは夫婦で築いた財産のことで、婚姻期間中に購入したマンション・一戸建てなどの不動産は共有財産にあたります。
では、共有財産に住宅ローンの残債がある場合どうなるのでしょうか。結論から言うと、原則としてマイナスの財産は分与の対象になりません。「財産分与の対象にならない」ということは、離婚後も住宅ローンの名義人に支払い義務があるということになるため、清算方法を考えねばなりません。
住宅ローンの残債があって離婚する場合は、下記のような対策があります。
- 家を売却して現金化し、返済する
- どちらか一方が住み、住宅ローンの支払いを続ける
「1」の場合、アンダーローンであれば、返済して残った金額を分け合えば問題ありません。しかし売却しても完済できないオーバーローンの場合は、「3.オーバーローンの場合の対策」で紹介したように、自己資金の投入や住み替えローンを検討する必要があるでしょう。
また、子どもの養育環境を変えたくないなどの理由で、「2」を選択する方もいるでしょう。この場合、どちらが名義人として支払いを続けるかはっきり決めておく必要があります。
どちらか一方が住む場合の方法は、関連記事でも詳しくご紹介しています。併せてお読みください。
5-2.ペアローン(共有名義)は解消が難しい
夫婦共働きの場合、共有名義、いわゆるペアローンで住宅ローンを組んだ方もいるでしょう。
ペアローンは、夫婦それぞれで住宅ローンを組むため、単独ローンよりも借入額が膨らみやすいという特徴があります。そのため、返済期間が短いと残債が多くオーバーローンとなり、結果として任意売却へ…というケースも少なくありません。
また、ペアローンの場合、ふたりの経済力を合算して購入しているため、どちらか一方に名義を一本化(借り換え)したくても、収入が足りずに銀行から断られてしまうおそれがあります。
任意売却や借り換えを行う際には、金融機関の許可が必須となります。離婚が決まったら「売却」か「借り換え」かを検討し、なるべく早めに住宅ローンの窓口に相談することをおすすめします。
共有名義の不動産売却については、関連記事で詳しく方法を紹介しています。こちらも併せてお読みください。
5-3.離婚した事実だけでは連帯保証人は解除されない
夫婦が住宅ローンを利用し家を購入した場合、連帯保証や連帯債務となっているケースがあります。また、ペアローンの場合も、互いに連帯保証人になることが多いでしょう。
離婚の際、支払者が引き続き返済するからといって連帯保証人のままでいると、万が一、住宅ローンの支払いが滞納した場合、とつぜん連帯保証人に債務の責任がいく危険性があります。
しかし、住宅ローン上の契約では、離婚したからといって自動的に連帯保証人や連帯債務者の責任が解消されることはありません。
連帯保証人から外れるためには、以下の3つの対策があります。
- 住宅ローンを借り換える
- 連帯保証人を他の人に替える
- 売却する
「1」の場合、そもそも単独で住宅ローンを組むのが難しく、それをカバーするために連帯保証人をつけているため、単身での借り換えは難航するおそれがあります。また、代わりの連帯保証人を立てる「2」も、代理人がなかなか見つからない場合もあるでしょう。
「3」で住宅を売却する際には、まずは、オーバーローンかアンダーローンかを見極めましょう。「IELICO」などの査定サービスを利用すれば、まとめて複数社に依頼できるため、納得できる査定額を提示してくれる不動産会社をスピーディーに見つけることができます。ぜひ活用しましょう。
場合によっては売却が難しいので、どちらか一方が住み続けることも検討しなければいけません。
『 離婚したら妻は住宅ローンのある家に住むべき?検討するうえでの注意点 』の記事もご覧ください
この記事のポイント
詳細は「1.住宅ローン中の家が売れるか判断する3つの確認事項」をご覧ください。
- 売却金額と貯蓄で完済する
- 住み替えローンを利用して売却する
- 任意売却をする
詳細は「2.オーバーローンの場合に売却するには?」をご覧ください。
詳細は「4.ローン中の家を売る際に使える税金特例」をご覧ください。
- 住宅ローン残債の財産分与方法
- ペアローンの解消が難しい
- 離婚しても連帯保証人は解消されない
詳細は「5.離婚で住宅ローン中の家を売却する際の注意点」をご覧ください。
売却前に住宅ローンを完済する可能性がある方は、以下の記事もご覧ください。
この記事の編集者
IELICO編集部
家を利口に売るための情報サイト「IELICO(イエリコ)」編集部です。家を賢く売りたい方に向けて、不動産売却の流れ、税金・費用などの情報をわかりやすくお伝えします。掲載記事は不動産鑑定士・宅地建物取引士などの不動産専門家による執筆、監修を行っています。
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